今こそ知りたい!!免疫 食のチカラで腸を元気に!!

腸を整える食事 発酵食品

著者 プロフィール
加藤里奈
一般社団法人健康栄養支援センター 理事/副会長
医療福祉栄養研究部コーディネーター
管理栄養士

加藤里奈

免疫ってどんなもの?

「免疫」とは、体外から侵入した異物や細菌などから体を守るために、人間に備わった仕組み。
「疫」=伝染病などを「免れる」という意味。
自分の体の一部=「自己」と、そうでないもの=「非自己」を区別して攻撃します。

体を守るしくみ

○物理的防御⇒皮膚、角膜、気道や消化管の粘膜

○自然免疫(先天性免疫)生まれつき備わっている免疫システム。外来細胞に対してすぐに反応する。
どんな異物に対してもほぼ同じ方法で対応し、過去の異物への対処は記憶されないため、同じ感染に対しての持続的な防御は備わっていない。
不安定で色々な刺激により反応性が変化する。

○獲得免疫(特異免疫)⇒生まれてから後天的に獲得される。異物(抗原)に遭遇するたびに、それぞれの抗原ごとに最良の攻撃方法を学習し、抗原を記憶する。
過去に遭遇した抗原に対し、それぞれに応じた(特異的な)攻撃をする。
獲得免疫ができるまでには時間がかかるが、同じ抗原に対するその後の反応は、自然免疫に比べて素早く行われ、効果も高まる。

免疫細胞 しくみ

腸管免疫とは?

人体で最も大きな免疫器官は、実は、腸管です。腸管は内臓器官ですが、その両端にある口腔と肛門を介して外界と接しています。
従って、腸管は内なる外界ともいえ、腸管粘膜は、細菌、ウイルス、寄生虫や化学物質などのさまざまな異物に絶えずさらされています。

これらの異物から身を守るために発達した仕組みが、腸管免疫系です。
ヒトの腸管は広げると約テニスコート1面分にもなり、抗体を作る全身のリンパ球の約60%が集中しています。

腸管免疫系は、
1)パイエル板などのリンパ組織
2)粘膜上皮細胞とその間の免疫担当細胞
3)上皮の内側にある粘膜固有層の免疫担当細胞

免疫のしくみ パイエル版
カルビー株式会社 研究成果 じゃがいも皮抽出物の経口投与によるマウスパイエル板細胞のサイトカイン産生への影響 ホームページより

から構成されています。また、腸管に分布する神経や消化管ホルモンなども、腸管免疫系の一部として働いています。
腸管免疫系では、これらの因子が協力して働くことにより自然免疫系や獲得免疫系が活性化され、さまざまな異物の攻撃から生体を守るために役立っていると考えられています。

経口免疫寛容

腸管免疫の特徴に、「経口免疫寛容」というものがあります。
口から入ったものの安全性を見極め、受け入れる場合は免疫反応を抑制、アレルギー反応をおこさないようにするという非常に合理的な仕組みのことです。

このように通常は食品に対してアレルギー反応を起こさない仕組みがあるのですが、なんらかの原因でこの仕組みがうまく働かず、口から入った食物に対して攻撃をしてしまうことで、食物アレルギーが起こると考えられます。

あかちゃん 食べる

腸内細菌

ヒトの腸管には約1000種類、100兆個の細菌が棲んでいます。
腸内細菌の細胞壁には、免疫防御機能を賦活化する菌体成分が含まれ、腸内細菌が宿主の免疫系に重要な役割を果たしていることが明らかになってきました。

ヒトと共生している腸内細菌は腸内免疫系の働きに不可欠なもので、もともとは外部から侵入した「非自己」ではありますが、安全で有益なものだと身体が認識しているといえるでしょう。

腸内ではいろいろな菌が入り混じって生息しており、腸内フローラと呼ばれます。
腸内細菌の力関係やパターンは個人差があり、また耐えず変化しています。善玉菌の優勢な環境を作ることが大切です。

善玉菌・・・ビフィズス菌・乳酸菌など
 腸内を酸性にして悪玉菌の増殖を抑えることにより、感染の予防、発がん抑制などの働きをする。消化管の粘膜免疫を高める。ビタミンを産生する。
悪玉菌・・・大腸菌・ブドウ球菌など
 腐敗物質の産生など、人体に有害なものをつくる。不規則な生活、ストレス、脂質過多の食事、便秘などが原因となり増える。
日和見菌・・・連鎖球菌・バクテロイデスなど
 善玉でも悪玉でもなく、腸内環境の状態によって変わる。体が弱ったときに感染を起こす。

善玉菌:日和見菌:悪玉菌の割合は、2:7:1、が理想的とされています。

腸内細菌
森永製菓株式会社 ビフィズス菌研究所 腸内細菌と健康 ホームページより

白血球と自律神経

免疫システムの主な担当は、血液の中の白血球です。
そしてこの白血球の働きに影響を与えるのが、自律神経と呼ばれるもので、全身の血管や内臓などの働きを無意識的に調整している神経です。
自律神経は、交感神経副交感神経があり、両者はバランスを取りながら働いています。

交感神経は、主に昼間、活動時、緊張・興奮しているときに働き、副交感神経は、主に夜間、休息時、リラックスしているときに働きます。
自然免疫の初期防御に重要なNK細胞(ナチュラルキラー細胞)の活性は、運動時など交感神経の有意な時に高いことが多くの研究で示されています。

しかしながら、多くの現代人は、休日出勤や残業、家事や育児など、忙しく時間に追われる生活でストレス過剰になりがちで、こうした交感神経の過度に優位な状況は、その後急激にNK活性が低下することが予想されます。

そうなる前に、副交感神経が優位なリラックス状態を作ることが、NK活性の著しい低下を避けるために重要だといえます。

自律神経
株式会社クオリティー ホームページより改変

免疫力が弱まる原因

現代人は昔と違って免疫力が弱まったといわれます。
多忙でストレスの多い社会への変化や、過度の清潔志向による細菌などの感染機会の減少、一方で大気や水などの環境汚染などが挙げられます。

また、加齢、睡眠不足や食生活の偏り、運動不足などの生活習慣も、原因となります。

免疫力と食

食事は、それ自体が消化管を動かすことであり、副交感神経の活性化につながります。
また、ゆっくり食事をすること、よく噛むことで、脳への血流増加、リラックス効果、生活習慣病予防などにもつながります。
まずは、食事そのものを楽しんでいきましょう。

だんらん 食事

食生活のポイント

①バランスの良い食事

免疫を担う細胞それ自体に、多種多様な栄養素が必要となるため、バランスのよい十分な食事を摂ることが基本になります。
バランスの良い食事とは、エネルギーが適切で、必要な栄養素が適量含まれた食事、といえます。

糖質、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル5大栄養素といい、これらが揃うことを目指します。
具体的なポイントは、主食・主菜・副菜 の揃う食事にすること。

主食=主にエネルギー源となるもの。主な栄養素は炭水化物。米、パン、麺、シリアルなど。
主菜=主にからだをつくるもの。主な栄養素はたんぱく質。魚、肉、卵、豆類・大豆製品、乳・乳製品など。
副菜=主にからだの調子を整えるもの。主な栄養素はビタミン・ミネラル。野菜、海藻、きのこ、果物など。
脂質は主食や主菜に含まれることが多いです。

伝統的な日本型食事でいわれてきた、一汁三菜、をイメージするとよいでしょう。

とはいえ、毎回それだけの品数を作るのは大変です。
主食・主菜・副菜が揃っていれば、鍋、ピザ、丼、などでもよいメニューになります。

一汁三菜

②腸内環境を整える 

腸が人体最大の免疫器官でもあるため、この環境を整えることも大切です。

善玉菌の割合を増やすためには、
ビフィズス菌や乳酸菌を多く含む食品=(プロバイオティクス) を継続的に摂取する。
                  ⇒発酵食品の利用
           
食物繊維やオリゴ糖の摂取 =善玉菌のエサとなる(プレバイオティクス)。
                  ⇒野菜類・果物類・豆類などを積極的に摂る

プロバイオティクス(Probiotics)
  乳酸菌などの腸内環境を整える微生物のうち、生きて腸に到達できる有用な微生物のこと

プレバイオティクス(Prebiotics)
  オリゴ糖などその栄養源となりプロバイオティクスの増殖を助けるもののこと

③皮膚や粘膜を健康に保つ

このほかに免疫に関わる栄養素として以下のようなものが挙げられます。

たんぱく質・・・皮膚や粘膜、免疫細胞などの材料となる(魚、肉、卵、豆・豆製品…)  
ビタミンA・・・皮膚や粘膜維持に関わる(レバー、うなぎ、卵…)   
ビタミンB・・・脂質代謝や皮膚や粘膜の新陳代謝に関わる(レバー、卵、納豆…)  
ビタミンB・・・アミノ酸代謝や皮膚粘膜の新陳代謝に関わる(魚類、バナナ、レバー…)
ビタミンC・・・コラーゲンの生成に不可欠で抗酸化作用も高い(緑黄色野菜、茶、キウイ…)  
ビタミンE・・・血流改善や抗酸化作用(ナッツ類、かぼちゃ、植物性油脂…)
亜鉛・・・多くの酵素の働きを助ける補酵素となったり、成長や生殖機能に関わる(牡蠣・牛肉・レバー…)

和食を見直そう

和食には以下のような特徴があり、伝統的な食材の中に免疫に関わる栄養素も豊富に含まれます。

・調味料、漬物、納豆など発酵食品が豊富
・四季折々で多くの食材を取り入れやすい
脂質が少なめ

 欠点は、塩分が高めになること。漬物やごはんのお供の摂り過ぎ、塩や醤油や味噌の使い過ぎに注意が必要です。

和食

 食材としては、以下のような食材をしっかり摂っていきましょう。
(※肥満や糖尿病の方はイモ類の摂りすぎには注意が必要です)

「まごはやさしい」
    豆類
    =ごま、ナッツ、アーモンドなどの種実類
    は(わ)=わかめ、昆布、寒天などの海藻類
    野菜類
    魚介類
    =しいたけ、しめじなどのきのこ類
    いも類

まごはやさしい

「まごはやさしい」の、手軽な活用法

豆腐・納豆・枝豆・豆乳などそのまま食べられるものを使う。
味噌汁に、野菜や海藻などをふんだんに入れ具沢山にする。
・種実類はふりかけ、トッピング、などそのまま使える。香ばしさやアクセント、風味付けに効果的。
 菓子の材料としても美味しい。
・サバ水煮・ミックスビーンズ、のような缶詰を利用する。栄養素の損失が少なく保存食にもなる。
魚の缶詰は骨ごと食べられてカルシウムの補給にも効果的。煮汁にもビタミンなど栄養が含まれるのでできるだけ使う。
 (※味付けのものは塩分が高いので加減する
・海藻は水戻ししてサラダの具材にしたり、そのまま味噌汁の具にもなる。

その他のポイント

ストレスをうまく発散できる方法を、各自それぞれに合う形でたくさん持っておくとよいでしょう。
また、笑うことで免疫細胞の一つである、NK細胞が活性化するという研究報告もあります。
参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans/31/3/31_3_3_61/_pdf≫

睡眠、休養をきちんと確保することも大切です。

適度な運動は、血流がよくなり、気分転換、リラックス効果のほか、生活習慣病予防にも効果的です。
まずは今より10分多く歩くことから始めてみましょう。

運動の時間を取ることが難しければ、日常生活での活動量を増やしていきましょう。
エレベーターの代わりに階段を使う、一駅前で降りて歩く、電車内で立つ、

など各自のライフスタイルに合う方法を取り入れてください。

コロナ禍の不安な状況ですが、できることから始めて、健康な身体を維持していきましょう。

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