毎日の食卓をカラフルに!!色のパワーでストレスにも負けないカラダ作りを

カラフルな食卓 野菜


著者 プロフィール
加藤里奈
一般社団法人健康栄養支援センター 理事/副会長
医療福祉栄養研究部コーディネーター
管理栄養士

加藤里奈

好きな色の服を着ると気分が高揚したり、森の緑や青い空のような自然の中でリラックスできたり、色は私たちの心身に影響を与えます。
毎日の食卓にも、様々な色の食べ物が使われています。食べ物が持つ色にも同じようにパワーがあります。
ストレスにも負けない健康な心身を保つため、それらをうまく活かしてみませんか?

色とは

私たちは色をどのように感知するのでしょうか?色はがあって初めて存在します。
太陽から発せられた幾筋もの光の束が、物体にぶつかって反射、屈折したり、あるいは透過したりして私たちの目に飛び込みます。

私たちの目に見える色は、可視光線と呼ばれる、7色のスペクトルです。
人間は赤より波長の長い光(赤外線)や紫より波長の短い光(紫外線)を感知できません。
そして人間が識別できる光の3原色は赤・青・緑です。この3つが組み合わさることで、750万色もの色があるといわれています。

たとえばこの例ですと、太陽光がイチゴに当たり、3つのうち青と緑の波長は吸収され、赤の波長の光だけが反射して赤く見えるのです。

色の仕組み スペクトル

色の効果

色彩にはその色がもつ特徴があり、衣服や家具、建物の外壁など、多くの生活環境においてその特徴が生かされています。
例えば、白は純粋、赤は情熱的、青は冷静、紫は高貴、黒は喪服の色、などです。

白 イメージ 結婚式

実際に、赤い色は体温を上げる効果があることがわかっています。
また赤い部屋では時間の過ぎ方が遅く、青い部屋では逆に早く感じるなども言われています。
東京大学の研究で、青い照明を電車のホームに設置すると飛び込み自殺者が減少したという報告があり話題になりました。
そのように、色には人間の心身に影響を与える効果があるのです。

そうした特徴を食に関して見てみますと、
赤や橙は温かく感じ、青や緑は涼しく感じる⇒夏や冬で食卓の演出に生かせる。
青は食欲を減退させ、赤は食欲を増加させる⇒青は天然の食品にはない色、赤い食べ物はおいしそうに見える。
補色効果でおいしそうに⇒緑の野菜を暖色の料理のアクセントにするとガラリと雰囲気が変わる。
※補色とは、色相環(色相の総体を順序立てて円環にして並べたもの)で正反対に位置する色のこと。互いに引き立てあう色といわれています。

補色 効果 料理 引き立てる

ストレスとは

では次に、ストレスとは何かをあらためてみてみましょう。

ストレス(Stress)
「何らかの原因で生じる心身の不快や苦痛、または不快や苦痛の原因そのもの」とされます。
主に、以下の3つに分けられます。

外的刺激によるストレス⇒  気温、湿度、騒音、放射線、自然災害、農薬やアレルゲンなどの
               化学物質、活性酸素、ウイルス、細菌  等
生理的ストレス⇒      疲労、睡眠不足、空腹  等
心理・社会的ストレス ⇒  社会的役割、人間関係、人生の大きな出来事、
               トラウマ経験 等            

ストレスが起こるしくみ

ストレスの刺激があると、それに立ち向かうための反応がおこります。
大脳新皮質でストレス刺激を受け取ると、それぞれの刺激に応じて神経伝達物質が分泌されます。
視床下部から、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンが分泌され、自律神経系の反応と、内分泌系の反応に分かれます。

内分泌系では、脳下垂体から副腎皮質刺激ホルモンが分泌され、副腎皮質を刺激してコルチゾールというホルモンが分泌され抗炎症作用などの働きをします。
自律神経系では、交感神経よりノルアドレナリンが放出され、副腎髄質を刺激してアドレナリンなどが分泌されます。

ストレスの伝達経路 免疫応答のしくみ
<出典:https://www.japa.org/mental_health/stress/body.html>

これらの仕組みはストレス防御の自然な仕組みですがこれが長期間続くことで、全身の臓器に様々な影響を与えます
肥満、高血圧、免疫抑制、消化性の潰瘍などの“心身症”といわれるものです。
心身症とは、「身体疾患の中で、その発症に心理社会的因子が関与し、器質的・機能的障害が認められる病態」をいいます。
これらの症状や病気は、みなさんにもおなじみだと思います。
いわゆる、生活習慣病です。ストレスによっても、こうした生活習慣病が発生することがわかります。

生活習慣病とは

生活習慣病とは、「食生活」「運動」「休養」「喫煙」「飲酒」などの、さまざまな“生活習慣”のあり方が要因となって起こる病気のことであり、高血圧・糖尿病・肥満・脂質異常症・がん・心筋梗塞・歯周病 などがあります。

下の図は、昭和22年から平成30年までの、人口10万人に対してどんな病気で亡くなった方がどれくらいいるかを表しています。
1位が悪性新生物、2位は心疾患、3位には老衰、4位が脳血管疾患となり、この年初めて老衰が3位に上りました。上位の疾患は、年代によって順位が変わっており、心疾患が増えてきていることは食生活の欧米化が一因だともいわれています。
食生活の変化が病気の構造にまで影響を与える可能性があるといえます。

死因 年次別推移 人口動態統計
図1 疾患別死亡率の年次推移 「平成30年人口動態統計月報年計(概数)の概況」より 出典:健康ひょうご21県民運動ポータルサイト

続いては、平成20年から30年までの、肥満者、痩せている方の割合です。
食生活の欧米化といいましたが、成人の男性では肥満化が進み、3人に1人が肥満です。(図2)
逆に、若い世代の女性ではやせ願望が強く、やせの方が上昇しています。(図3)
このように現代の日本では肥満と痩せ、二極化傾向になっています。

肥満者の割合 国民健康栄養調査
図2 肥満者(BMI≧25㎏/m2)の割合の年次推移(平成20~30年)国民健康栄養調査
やせの者の割合 国民健康栄養調査
図3 やせの者(BMI<18.5㎏/m2)の割合の年次推移(平成20~30年)国民健康栄養

生活習慣病の発症

生活習慣病は、食生活・運動・休養・喫煙などの生活習慣要因、病原体・活性酸素・ストレスなどの外部環境要因、加齢・遺伝子異常などの遺伝要因により発症します。
このうち、外部環境や遺伝的要素は変えることがなかなか難しいですが、生活習慣要因を改善することで生活習慣病の発症を予防することも可能です。

生活習慣病を防ぐためには、生活習慣の見直しが大切なのです。

生活習慣病の発症 生活習慣 要因

ストレスとうまくつきあっていくために

生活習慣病の発症にも関わるストレスですが、食事・休養・睡眠・運動、が重要な因子になります。
これらを見直してみることと、自分に合ったストレスの発散方法を見つけることも大切です。
そして、それらに加えてご紹介したいのが食べ物が持つ色のパワ―です。

植物の色が持つパワー

野菜や果物などの植物性の食べ物は非常に色の種類が多い食べ物です。
これらが持つ色には、さまざまな効能があることがわかってきました。
植物に含まれる色素や香りなどの成分「フィトケミカル」と言われ、1万種類以上あるとされています。
植物が自らを外敵や有害な物質、主に紫外線から守るために作りだしたもので、主要な作用に抗酸化作用というものがあります。

色 フィトケミカル 野菜 植物

活性酸素と抗酸化力

私たちは、酸素を取り入れて生きています。このとき、体内で必ず発生するのが「活性酸素」です。
通常の酸素分子よりも電子が1個多かったり少なかったりと、エネルギーレベルが高かったりと不安定な状態になっている酸素や酸素化合物などのことです。
自分が安定した分子になるために、さまざまな相手に電子やエネルギーを放出したり奪ったりして、細胞の成分を酸化させてしまうのです。

一般的に呼吸した酸素の2~3%が活性酸素になり、通常は体内に侵入した細菌を殺菌する働きをします。
ですが、過剰に発生すると、その強い反応性から、細胞が傷ついて様々な病気を引き起こすといわれています。
この活性酸素を消去する力抗酸化力といいます。
活性酸素はストレスの要因ともなるため、抗酸化力はストレスに負けない身体作りにとって大きな助けになります。

活性酸素 抗酸化力

フィトケミカルの種類

このような力をもつフィトケミカルには、多数の種類があります。

カロテノイド・・・油に溶けやすい脂溶性の物質で、緑黄色野菜に多く含まれます。βカロテン(体内でビタミンAに変わる)、リコピン(トマトに多い)、ルテイン(紫外線による目の老化を防ぐ)などがあります。油と一緒に調理すると吸収率が上がります。

ポリフェノール・・・水溶性の物質で、淡色野菜や果実に多く含まれます。300種類以上あり、苦みの成分が多いです。
ポリフェノールとは、分子内に複数のフェノール性水酸基(-OH)をもつ物質の総称で、ほとんどの野菜や果実に含まれます。フラボノイドと非フラボノイドに分けられ、そのうちフラボノイドの中には、アントシアニン(視覚機能を改善する効果が期待できる)やイソフラボン(女性ホルモンのエストロゲンに似た構造をし、更年期障害を防ぐ効果や、破骨細胞を減らすことで骨粗鬆症の予防の効果などが期待できる)非フラボノイド系にはクルクミン(肝機能強化、解毒作用が期待できる)などがあります。

含硫化合物・・・硫黄を含む物質で、玉葱やにんにくなどの臭いの成分であるイソチオシアネート類などがあります。(抗血栓作用、発がん抑制の効果が期待できる)

野菜 きのこ カラフル フィトケミカル

野菜の色とフィトケミカル

 次に野菜を色別に分けて、主なフィトケミカルについて説明します。

赤の野菜 リコピン⇒非常に強い抗酸化力を持ち、特に脳の神経細胞の酸化を抑制します。トマト、
     金時ニンジン、スイカなどに多く、トマトはジュースに加工されたものの方が生の何倍も
     吸収がよいという報告がある。
     カプサンチン⇒ 同じく抗酸化作用がある。赤ピーマンや赤唐辛子に多い。

橙の野菜 βカロテン⇒体内でビタミンAに変わる。高い抗酸化作用がある。
     ルテイン⇒網膜に存在し、青色光の害から守る。水晶体の酸化を防ぐ。
     ケルセチン(黄色)⇒LDLコレステロールの酸化を防いだり(動脈硬化の進行を予防)、
     血流を改善する効果が期待できる。

緑の野菜 クロロフィル⇒葉緑体に含まれ、抗酸化作用は弱いが消臭効果がある。
     βカロテン⇒ほとんどの緑の野菜にはβカロテンが含まれる。クロロフィルが集められない
     波長の光を集めるため。葉の寿命でクロロフィルが分解すると、カロテノイドが残り、細
     胞を守る(=紅葉)

紫の野菜  アントシアニン⇒眼精疲労を回復する。
      べタニン⇒抗酸化作用。マウスで発がん抑制作用があるという研究結果がある。

野菜の色分け フィトケミカル

このように、植物の色は、さまざまな機能を持ちます。
人間にとって有害な作用をもたらす活性酸素は、植物が行う光合成においても発生し細胞を傷つけます。
その防御システムとして身につけたものが、植物の色素による抗酸化力だといえます。

ストレスと栄養成分

その他にも、ストレスや脳に効果的とされる成分としては、以下のようなものがあります。

ビタミンC⇒免役力を強化したり、抗酸化作用がある。ストレスを防御するために分泌される副腎皮質ホルモンの合成に関わるため、ストレスを受けた時に大量に消費される。ビタミンCは壊れやすく水溶性なので、毎日意識して摂るようにしたい。ピーマン、パプリカ、ブロッコリー、柑橘類、キウイ、いも類、茶などに豊富。

EPA,DHA⇒魚油に含まれるn-3系脂肪酸という不飽和脂肪酸。血清中性脂肪値の改善や、血栓の防止などに効果が期待される。近年では、脳内の神経伝達物質に作用して、うつ症状の治療効果が期待できるという研究報告もある。

クルクミン⇒ターメリックの色素成分で、別名ウコンとよばれ、カレー粉に含まれる。アルツハイマー型認知症は、脳の中に「βアミロイド」というたんぱく質が蓄積して神経細胞を壊し、脳が委縮してしまう症状だが、クルクミンには神経細胞の死滅を防ぐ効果があるとされる。

その他、ビタミンの中でも、βカロテンビタミンCビタミンE(アーモンド、かぼちゃ、サフラワー油・コーン油などに豊富)は抗酸化ビタミンといわれ、協力し合って活性酸素から私たちを守ってくれています。

ブイヤベース 魚 ターメリック ビタミン

野菜を積極的に摂ろう

図4は、野菜摂取量の年次推移です。厚生労働省は、1日350gの野菜摂取を推奨していますが、野菜の摂取量は横ばいで、目標値を下回っています。若い世代で顕著です。

野菜摂取量 国民健康栄養調査
図4 野菜摂取量の年次推移(平成20~30年)20歳以上 国民健康栄養調査

また、図5は野菜からどんな栄養素を摂取しているかの表です。
日本人が摂取している栄養素の平均摂取量を100%として、その何%を野菜と果物から摂取しているかを示しています。
各種ビタミン類やミネラル類、食物繊維など日本人が不足しがちな栄養素の多くを、野菜から得ていることがわかります。
毎日、一握り、付け合わせや小鉢1品からでもよいので野菜の料理を加えてみましょう

野菜から摂取している栄養素量
図5 野菜から摂取している栄養素量 出典: http://www.5aday.net/v350f200/kenzen/jittai_b.html

色のパワーで健康な食生活を!!

このように、野菜や果物が持つ色には、大きなチカラがあります。
色のパワーを毎日の食卓で取り入れ、ストレスにも負けないカラダを作りましょう!!

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