果糖ぶどう糖液糖って何?|体に悪いの?

著者 プロフィール
医療・福祉栄養研究部所属 管理栄養士
M・I

料理やお菓子に甘味をつけるものの代表として砂糖がありますが、現在砂糖以外にも甘味をもつものは様々あります。
今回は、砂糖よりも甘味が強く市販の商品によく使用されている果糖ぶどう糖液糖をはじめとした「異性化糖」について触れてみたいと思います。

清涼飲料
清涼飲料水などに良く使用されている

ジュースなどの清涼飲料水の原材料表示として、「果糖ぶどう糖液糖」という成分を見たことはありませんか?
実は、「果糖ぶどう糖液糖」だけでなく、「ぶどう糖果糖液糖」というものもあり、これらは異性化糖という甘味料の種類なのです。
異性化糖そのものは商品としてスーパーなどで見かけることはありませんが、清涼飲料水や栄養ドリンク、ガムシロップ、焼き肉のたれのような調味料などの原材料として大変よく使用されています。しかも、日本だけでなく世界中で使用されています。

異性化糖とは

異性化糖とは、でんぷんを原料として作るぶどう糖(グルコース)と果糖(フルクトース)の混合液です。
でんぷんには、とうもろこしでんぷん、じゃがいもでんぷんあるいはさつまいもでんぷんなどが利用されています。
でんぷんそのものには甘味はありませんが、でんぷんに酵素を添加し分解していくことで甘みをもつぶどう糖や果糖が作られていきます。

種類

異性化糖は日本農林規格(JAS)で規定されており、果糖含有率によって3種類に分類されています。
・果糖含有率50%未満→ぶどう糖果糖液糖
・果糖含有率50%以上90%未満→果糖ぶどう糖液糖
・果糖含有率90%以上→高果糖液糖

どちらが多く含まれているかで、名前の順序が違うということです。
さらに、ぶどう糖果糖液糖あるいは果糖ぶどう糖液糖に10%以上の砂糖を加えた砂糖混合異性化液糖もあります。
(その液糖がぶどう糖果糖液糖なら砂糖混合ぶどう糖果糖液糖となる)
このうち、現在最もよく使用されているものは果糖含有率が55%の果糖ぶどう糖液糖です。

名前の由来

でんぷんはぶどう糖が多数結合したものであるため、でんぷんを分解しても果糖は作られないはずです。
しかし、酵素の力によってぶどう糖を果糖に変えることができ、これを異性化といいます。
アメリカではとうもろこしから作られることがほとんどであり、「コーンシロップ」といわれています。

特徴

異性化糖の特徴は、甘味です。
しょ糖(砂糖)の甘味を基準(100%)とすると、ぶどう糖は約70%、果糖は120~170%の甘味です。果糖はしょ糖(砂糖)より甘味が強いのです。
異性化糖の甘味はぶどう糖と果糖の割合によって変化し、果糖の割合の多いものほど甘味は強くなっていきます。
ただ、現在最も使用されている果糖含有率55%の果糖ぶどう液糖の甘味は砂糖とほぼ同じ、といわれています。
ではなぜ、果糖ぶどう糖液糖が使用されるのでしょうか?
実は、果糖は温度によって甘味が変化します。高温では砂糖よりも甘味は弱いのですが低温では砂糖よりも甘味が強くなります。
そのため、果糖ぶどう糖液糖は冷たい状態で飲む清涼飲料水などに使用されることが多いのです。
また、果糖ぶどう糖液糖は砂糖と比べるとキレのあるさわやかな甘味といわれることもあります。
ガムシロップにも果糖ぶどう糖液糖が使用されていることが多いですが、ガムシロップは主に冷たい飲み物に使用されますよね。
また、果糖ぶどう糖液糖などの異性化糖は、砂糖よりも価格が安いということも、よく使用されている理由です。

異性化糖の普及と現在

1960年代、日本国内ではさつまいもの有効利用の方法として異性化糖の生産が進み、砂糖の代替製品として広まりました。
その後、アメリカでも広がりを見せ始めます。
これはキューバ革命によりキューバから砂糖を手に入れることができない状態にあったことなどが背景にあるようです。アメリカでは、とうもろこしを原料に製造がスタートしました。
さらに他国への輸出もすることで、さらに世界に異性化糖は普及することとなりました。
ちなみに、異性化糖はとうもろこしやさつまいもなどのでんぷんから作られるため、
現在、各国の農家の収入を支える意味でも大切なものとなっています。
以下は 砂糖及び異性化糖の需給総括表です。異性化糖は30%程度占めています。

砂糖および異性化糖生産量グラフ
異性化糖の生産量は全体の30%程度

上記の表は独立行政法人 農畜産業振興機構 需給関係資料より(2020年6月29日公表)

異性化糖と健康

異性化糖は経済的に大切なものです。しかしながら、調べていると健康に対してはマイナスの情報が多くみられます。
なぜでしょうか。

異性化糖は体に悪い?

肥満
異性化糖は肥満の原因?

異性化糖の健康への懸念が広まったのは2004年です。
ルイジアナ州立大学およびノースカロライナ大学研究陣によってAmerican Journal of Clinical Nutrition(AJCN)誌にて発表された「米国内における果糖ぶどう糖液糖と肥満の発症との関係を調査した研究」がきっかけのようです。
この研究では果糖ぶどう糖液糖の消費の増加は、砂糖よりも肥満の原因になりやすいと述べられています。
この発表を機に、果糖ぶどう糖液糖がメディアで取り上げられ、関連記事や研究が増えました。
この流れに対して、
2008年、米国医師会(American Medical Association : AMA)はAmerican Journal of Clinical Nutrition (AJCN)誌にて
異性化糖(果糖ぶどう糖液糖)としょ糖を比較して代謝の違いはほとんど見つからなかったことを発表し、
異性化糖(果糖ぶどう糖液糖)の消費量の増加と肥満の関連については否定
をする形となりました。
しかし、一度広まった懸念はなかなか払拭されないようで、
いろいろな企業は甘味料を異性化糖から砂糖に変える動きとなりました。
大手のコーヒーショップであるスターバックスコーヒーも、2009年に菓子パン類の甘味原料をすべて、砂糖に切り替えたそうです。
このため、アメリカでの果糖ぶどう糖液糖の消費量は現在減少傾向にあります。

ぶどう糖と果糖の働き

異性化糖に関する健康への影響についてはさまざまな意見があります。
ここで、異性化糖の成分のぶどう糖と果糖に分けて、体内での働きを見てみましょう。

●ぶどう糖
ぶどう糖は小腸から吸収されたのち血糖となり、インスリンの働きによって体の必要な部分に取り込まれエネルギーとなります。また、肝臓に運ばれグリコーゲンとして合成されたり、中性脂肪の合成に利用されていきます。

●果糖
果糖も小腸から吸収されますが、直接的に血糖とはなりません。
肝臓に運ばれたのち、ぶどう糖に変換されて血糖となります。
また、果糖のすべてがぶどう糖になるわけではなく、エネルギーになったり中性脂肪の合成に利用されていたりします。この時、ぶどう糖に比べて果糖は速く利用されるため、特に果糖は中性脂肪を合成しやすい、と言われています。

こうなると、果糖を含む異性化糖は体に悪い、となりそうです。
実際に、異性化糖は体に良くないという理由のほとんどは果糖が中性脂肪の合成を促進するであったり、
直接的に血糖とならないため満腹感が得られないということで結論づけられています。
しかしながら、果糖を含む食品は異性化糖に限りません。
砂糖の主成分はしょ糖ですが、体内に入るとぶどう糖と果糖に分解されて吸収されます。
(砂糖の種類によって栄養面での差が大きくないことは前回のとおり)
また、果糖が単独で存在している食品として、果物とはちみつがあります。
果物もはちみつも、果糖のみ含まれているわけではなく、ぶどう糖としょ糖も含まれています。
はちみつに関しては、体に悪い、どころか、体に良いイメージのほうが強い食品だと思います。
以下は果物とはちみつに含まれるぶどう糖、果糖、しょ糖の含有量をまとめた表です。

果物とはちみつの糖類含有量
果物とはちみつの糖類の含有量一覧

ちなみに、2008年のAMAの発表では、
果糖ぶどう糖液糖は砂糖やカロリーの摂取量増加に関与しており、
果糖ぶどう糖液糖含有量に関係なく、飲料やその他の食品からのカロリー摂取量に気を付ける必要がある
、と締めくくっています。

摂取量、全体的なバランスが大切

異性化糖を摂ると肥満になりやすい、あるいは病気になりやすいということはなさそうです。
しかしながら、果糖が中性脂肪を合成しやすいというのは事実であり、摂り過ぎはよくありません。
ただ、それは異性化糖に限らず、砂糖、はちみつ、果物などについても言えることです。

ですので、以下のことに注意してみてはどうでしょうか。

甘いものは摂り過ぎない
 おやつとして摂るお菓子の量は200kcal程度が良いといわれていますのでそれを参考にしましょう。
 (食事バランスガイドに基づく)
 また、清涼飲料水などの液体は血糖値も急上昇する危険があるため習慣的な摂取や一気飲みを避けましょう。
●果物の摂り方に注意する
 果物は1日200gの摂取がおすすめされていますが、果物によって糖類の量は異なるため、
 糖類の多い果物を把握しておくと良いでしょう。
(糖尿病の場合、果物の摂取量は医師との相談による)
●ゆっくり食べる
 甘いものを食べるときはゆっくり食べることを意識し、満腹感が得られる工夫をしましょう。
 同じ果物でもジュースではなく、果物そのものを食べるようにしましょう。

今回は異性化糖について述べましたが、異性化糖をはじめ、新しい甘味料(低エネルギー甘味料)などはまだまだ研究が進められている状態であり、はっきりと体に良い・悪いを断言できません。
何事も摂り過ぎに気を付けていろいろなものをまんべんなく、ということが健康を維持するポイントなのではないでしょうか。

<参考資料>
・独立行政法人 農畜産業振興機構https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_000154.html
・日本甜菜製糖株式会社  https://www.nitten.co.jp/syrup.html
・コカ・コーラ https://www.cocacola.co.jp/article/caloric-sweetener_04
・Bray, G. A. et al. Consumption of high-fructose corn syrup in beverages may play a role in the epidemic of obesity. American Journal of Clinical Nutrition. Vol. 79, No. 4, 537-543. April 2004.
・Fulgoni V 3rd. High-fructose corn syrup: everything you wanted to know, but were afraid to ask. Am J Clin Nutr. 2008; 88(6): 1715S.
・食事バランスガイド https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/zissen_navi/use/concept.html

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