カロテンの宝庫「にんじん」
今回は、2月に「食材塾」で取り上げた「にんじん」についてご紹介します。
にんじんは、年中市場に出回っており、値段も安定した野菜のひとつです。
正月用によく出回る東洋種の京人参は金時人参と呼ばれます。
現在多く栽培され普及しているのは西洋人参と呼ばれる品種です。
【レシピ原案】 一般社団法人健康栄養支援センター
管理栄養士 田川倫子
【編集・執筆】 一般社団法人健康栄養支援センター
運動・女性栄養研究部
管理栄養士 畠山佳奈
病院・老人ホームでの勤務を経て、現在保健指導業務に従事
Contents
【にんじんの栄養価と食べ方】
流通量の多い野菜の中では、にんじんのβカロテン量はダントツです。
プロビタミンA(体内で必要に応じてビタミンAに変換される物質)であるカロテンには
β(ベータ)型の他にα(アルファ)型、γ(ガンマ)型、クリプトキサンチンなどがありますが、
ビタミンAとしての効果が最も高いのはβカロテンです。しかしながら、
摂取したβカロテンすべてがビタミンAに変換されるわけではなく、
吸収効率やビタミンAへの変換率を考えると、
βカロテンはレチノールの6分の1の効力に相当すると見積もられます。
βカロテンは、生体内では皮膚や粘膜の健康を維持したり、
光刺激反応に重要な役割をしたり、様々な細胞の増殖や分化に寄与します。
またそれ以外にも、βカロテンは抗酸化作用および免疫賦活作用などがあることが報告されています。
βカロテンの必要量は定められていないため、
βカロテンを含むビタミンAの推定平均必要量を見てみると、
男性18~74歳で600~650㎍RAE/日、女性18~74歳で450~500㎍RAE/日(厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020年版 より)となります。
にんじんに含まれるβカロテン当量は
100g当たり皮つきで6900㎍、皮なしで6700㎍、
つまり1㎝(約10g)あたり約670~690㎍含まれることになります。
しかし、βカロテンのすべてがビタミンAに変換される訳ではないため、
仮にβカロテンだけでビタミンAを充足しようとすると、より多く摂る必要があります。
通常の食生活では、ビタミンAが不足することはほとんどありませんが、
欠乏すると暗がりで視力が著しく低下する夜盲症を発症したり、皮膚や粘膜の乾燥、子供の場合は成長障害につながる可能性もあります。
ビタミンAは、過剰に摂ると肝機能などに異常をきたす恐れがありますが、
βカロテンは、体にとって必要な分だけビタミンAに変換されるため、人参を食べ過ぎることで大きな影響はありません。
カロテンは脂溶性であるため、油と一緒に摂ることで吸収力が上昇します。
βカロテンを積極的に摂りたい場合は人参を使った炒め物や、油入りのドレッシングをかけてにんじんサラダを楽しむのがいいですね。
酸化に注意!
人参をすりおろしたり細かく刻むときなどには、人参には、アスコルビナーゼというビタミンCを酸化させ破壊する働きがある酵素が含まれているため注意が必要です。アスコルビナーゼは空気に触れると働き出すため、すりおろしたり、ジュースにするなど酸素にふれる面が多くなることでより活性化し、自身のビタミンCを破壊するだけでなく、一緒にとる食品のビタミンC も破壊されます。酢かレモン汁を加えることで酵素の働きを抑えるか、50℃以上の熱を加えるかしてから使うとよいでしょう。
にんじんには、βカロテンのほかにも、
体内の塩分の排泄を助けるカリウムや、整腸作用のある食物繊維(不溶性食物繊維、水溶性食物繊維)が含まれています。
βカロテンや食物繊維は、皮やより皮に近い部分に多く含まれるため、
よく洗いなるべく皮も余す事なく丸ごと食べる事がお勧めです。
人参の皮は大変薄く、出荷前に泥を落とす作業で、ある程度むけています。
ただし、皮にはアクの成分が多く含まれており、煮物に使う場合は黒ずみの原因になります。
綺麗な色に仕上げたい場合は薄く剥くようにするといいでしょう。
残った皮は、キンピラを作ったり、細かく刻んで汁物やミンチ料理に入れたりするのがお勧めです。
皮つきで食べる事に抵抗がある人でも、比較的食べやすくなりますよ。
何かひとつの食品や栄養素ばかりに偏って食べることはお勧めしませんが、
鮮やかなオレンジは料理を彩りよくし食欲もそそります。色味のアクセントに、毎日取り入れてみてはいかがでしょうか。
【にんじんの選び方】
◆丸みがあり、全体的に太く色が濃くて艶の良い物を選ぶ。
◆先が細い物は避ける
◆ 葉を落とした断面が小さく、黒くない物を選ぶ。
断面同様芯の部分も細く、繊維質も少なく柔らかい。断面が大きいものは、葉が長い期間ついていて葉に栄養を取られてしまっている為、味も落ち、栄養成分も少なくなる。また、古い物は断面が黒く変色するのが特徴です。
【にんじんの保存方法】
湿気があると腐りやすいため、買ってきたら必ず袋から出します。
乾燥している時期であれば、風通しの良い場所で常温保存しましょう。
また、乾燥にも弱いためむき出し保存も避けましょう。
基本は育った土の中のような環境にするのが良いとされています。
冷蔵庫に入れる場合は、1本ずつペーパータオルで包みビニール袋に入れて縦に立てて保存します。
3~4日ごとに交換すれば、1カ月程保存もできます。
使いかけのものは切り口から乾燥していたんでしまいます。残りはカットして冷凍してしまうのがお勧め。
そのまま保存するのであれば、乾燥しないようラップに包んでから冷蔵庫で保存します。
【にんじんアイデアレシピ】
鯖の味噌煮缶とにんじんの炒め煮
◆材料(2人分)
鯖味噌煮缶 2つ
にんじん 1/2本(75g)
ごぼう 10㎝(30g)
しょうが 少々
水 50cc位
◆作り方
①にんじんは少し太めの千切り、ごぼうは笹がき、しょうがは千切りにする。
②フライパンに缶詰をあけ、サバを少しほぐす。
③にんじん、ごぼう、しょうが、水を加え水分がなくなるまで炒め煮にする。
にんじんごはん
◆材料
米 2合
にんじん 200g
昆布水(にんじんの絞り汁と合わせて) 400cc
塩 小さじ1/2
にんにく 1かけ
バター 20g
ブラックペッパー お好みで
◆作り方
①米を洗う。
②にんじんをすりおろし、絞り汁と分ける
③絞り汁に昆布水を加え400ccになるように準備する。
④米、にんじん、塩、にんにくを炊飯器に入れ、③を入れて炊飯する
⑤炊きあがったご飯にバターを入れ混ぜる
にんじんの豆乳スープ
◆材料(2人分)
にんじん 100g
玉ねぎ 50g
昆布水 200cc
豆乳 100cc
塩 少々
白みそ 小さじ1/2
◆作り方
①にんじんは半月切り、玉ねぎは薄切りにする
②鍋ににんじん、玉ねぎ、昆布水を入れ、塩少々を入れ柔らかくなるまで煮る
③粗熱をとってからミキサーにかける。
④再び鍋に戻し、豆乳を加え、塩で味を調える
にんじんのクミン炒め
◆材料(2人分)
にんじん 120g
クミン 小さじ1
にんにく 1/2かけ
塩 少々
油 適量
◆作り方
①にんじんは千切り、にんにくはみじん切りにする
②フライパンに油をひき、クミンとにんにくを入れ香りを出す(焦がさないよう注意)
③にんじんを加えて炒め、塩少々で味を調える
にんじんの米粉パンケーキ
◆材料(直径10cm3枚分)
米粉 80g
ベーキングパウダー 4g
砂糖 大さじ1強
卵 1個
人参 60g
牛乳 60g
油 適量
◆作り方
①米粉、ベーキングパウダー、砂糖を混ぜる
②にんじんをすりおろして①に加え、さらに卵も加える
③牛乳を少しずつ入れて混ぜる
④フライパンに油を熱し、焼く
にんじんのお焼き
◆材料(14個分)
にんじん 250g
米粉 100g
ピザ用チーズ 1カップ
油 適量
◆作り方
①にんじんをすりおろす
②米粉を入れまぜ、さらにチーズを加え混ぜ、14等分し平丸形に丸める
③フライパンに油を熱し、中火で表裏3分ずつ焼く
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大塚製薬栄養素カレッジ
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