【食材シリーズ】牛乳①実はこんなにたくさんの種類が!

著者 プロフィール
医療・福祉栄養研究部所属 管理栄養士
M・I

牛乳

牛乳は世界中で食されているとても身近な食品です。また、ヨーグルトやチーズ、バター、クリームなどさまざまな乳製品へと姿を変え、料理やお菓子に大活躍してくれます。
栄養面では、手軽にカルシウムを摂ることができる食品です。また、たんぱく質の補給にも役立ちます。
しかしながら、スーパーの牛乳コーナーにはさまざまな種類があり、どれにしようか迷ったことはないでしょうか?
一番安いものを購入したら、あまりおいしくなかった、やっぱり安いものはおいしくないのかな・・・?そんな風に思ったことはありませんか?
それは値段のせいではなくて、きちんと選べていないだけかもしれません。
今回は牛乳の種類と栄養面についてお話していきたいと思います。

乳製品いろいろ

牛乳の種類

みなさんは牛乳を購入する時、表示を確認したことはありますか?
パッケージに大きく記載されている商品名だけでなく、「種類別名称」が記載されており、これが牛乳の種類を示しています。
牛乳の種類別名称は【食品衛生法の乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)】によって定義や成分規格が決められています。
大まかに、搾った生乳のみを使用したもの(無添加)と、他の材料を添加したものに分けられます。
搾った生乳のみを使用したもの(無添加)はさらに、成分を調整していない牛乳と成分を調整した牛乳に分けられます。
今回は、種類別名称に基づき、牛乳、特別牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、成分調整牛乳、加工乳、乳飲料について説明していきます。

●牛乳

乳牛から搾ったミルクを生乳といいます。
この生乳の成分を調整しないで殺菌のみしたものを「牛乳」といいます。成分無調整牛乳とパッケージに記載されて販売されているものもあります。
もう少し詳しく述べますと、生乳をホモジナイズ(均質化)し、殺菌(120℃~150℃、1~3秒の超高温瞬間殺菌)して製造されます。
この牛乳の製造過程で、ホモジナイズをしない牛乳や低温で殺菌する場合もあり、
ホモジナイズしていない牛乳を「ノンホモ牛乳」、低温で殺菌した牛乳を「低温殺菌牛乳」と表示して販売している製品もあります。

一般的な牛乳の製造方法

<ホモジナイズとは>
しぼっただけの生乳に含まれている脂肪は、サイズがバラバラです。
脂肪球が大きいものは牛乳の表面に浮き上がりやすく、それが互いに結びついてクリーム状となり、口当たりなどに影響します。そのため、脂肪球を細かくし均一になるように処理されており、これをホモジナイズ(均質化)と言います。
ホモジナイズを行った牛乳を「ホモ牛乳」と呼ぶのに対し、
ホモジナイズを行っていない牛乳を「ノンホモ牛乳」と言っています。
ホモ牛乳の方が一般的ですが、ノンホモ牛乳は、「搾りたての生乳が味わえる」という点で好まれることがあります。

<殺菌方法>
生乳には、牛にも人にも感染する可能性のある感染症(人獣共通感染症)の病原体が混入している可能性があります。
そのため、日本では乳等省令において「保持式により63℃で30分加熱するか、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌すること」と決められており、以下の表に示す殺菌方法があります。
(保持式とは、タンクなどに生乳を入れて加熱し、殺菌温度と時間を維持する方法です。)

 表 生乳の加熱殺菌方法の種類と特徴

牛乳の殺菌

※人獣共通感染症の原因菌としてQ熱病原体(コクシエラ菌)の耐熱性に基づいて牛乳殺菌の条件が定められている。


成分規格は乳脂肪分3.0%以上、無脂乳固形分8.0%以上と決められており、
市販されている製品は乳脂肪分3.5%以上、無脂乳固形分8.3%以上のものが大半を占めています。乳脂肪分とは、牛乳の脂質のことです。無脂乳固形分とは、牛乳に含まれている成分のうち水分と脂質(乳脂肪)以外の成分のことで、たんぱく質、糖質、カルシウムなどを指します。乳脂肪分と無脂固形分は牛乳の味の濃さや栄養面に関係します。

●特別牛乳

特別牛乳搾取処理業の許可を受けた施設で製造された牛乳で、特別牛乳として販売されるものです。
殺菌の工程を省くことができます(加熱殺菌を行う場合は63〜65℃で30分間とされています)。
成分規格は無脂乳固形分8.5%以上、乳脂肪分3.3%以上と決められています。
細菌数(標準平板培養法で1ミリリットル当たり)は牛乳が細菌数 50,000以下が規格である一方、特別牛乳は30,000以下と厳しくなっています。

●低脂肪牛乳

生乳から乳脂肪分のみを調整した牛乳のうち、乳脂肪分が0.5%以上1.5%以下のものです。
乳脂肪分が少ないため、あっさりした味になり、エネルギーが低くなります。

●無脂肪牛乳

生乳から乳脂肪分のみを調整した牛乳のうち、乳脂肪分0.5%未満のものです。
乳脂肪分がさらに少ないため、低脂肪牛乳よりもあっさりした味になり、エネルギーは低脂肪牛乳よりも低くなります。
脂質やエネルギーの摂取を控えたい場合は低脂肪牛乳や無脂肪牛乳を選ぶと良いでしょう。

●成分調整牛乳

生乳から乳脂肪分を調整したもののうち、「低脂肪牛乳と無脂肪牛乳に該当しない」ものです。
例えば、水分を除去することで乳脂肪分を4%など濃くした牛乳や、水分や乳脂肪分を調整し、乳脂肪分1.5%以上3.0%未満に調整したものなど風味や栄養面での調整を行っている製品です。近年低カロリー志向や低価格も相まって成分調整牛乳は増加傾向です。

●加工乳

生乳に乳製品(脱脂粉乳、バターなど)を添加し、成分を調整したものです。
成分規格は無脂乳固形分8%以上であり、低脂肪乳、無脂肪乳と濃厚タイプがあります。

※低脂肪牛乳と低脂肪乳の違い
 低脂肪牛乳は生乳の乳脂肪分のみを調整したもの。原材料は生乳のみ。
 低脂肪乳は生乳に乳製品を添加し、成分を調整したもの。
 原材料は生乳+乳製品(脱脂濃縮乳や脱脂粉乳など)

●乳飲料

乳製品を主原料とした飲料で、乳固形分3%以上(無脂乳固形分+乳脂肪分)のものです。
カルシウムや鉄などを加えた栄養強化タイプや、
いわゆるカフェオレ、イチゴ牛乳など、また乳糖でお腹を壊す人のための乳糖分解乳もこれに含ます。

牛乳の成分

●たんぱく質

牛乳に含まれるたんぱく質は、必須アミノ酸をバランスよく充分に含むことから良質のたんぱく質源といわれています。牛乳のたんぱく質にはカゼイン乳清たんぱく質(ホエイたんぱく質)というものがあります
カゼインが約80%、乳清たんぱく質が約20%となっています。

カゼイン

牛乳のたんぱく質の約80%を占めています。酸を加えると固まる特徴を持っています。チーズやヨーグルトはカゼインが酸によって固まる特徴を活かした食品です。
牛乳を飲んだ時、胃液に含まれる胃酸によってカゼインはヨーグルト状に半固形化します。
これにより、胃内停滞時間が長くなることで胃液に含まれる消化酵素のペプシンがゆっくり働くことができ、消化が充分に進みます。
カゼインホスホペプチド(CPP)は、カゼインが分解される途中で作られるたんぱく質分解物です。カゼインホスホペプチドにはカルシウムと結合する特徴があり、腸からのカルシウムの吸収に役立っています。

乳清たんぱく質

乳清たんぱく質

ヨーグルトの上澄みとして見られる薄い黄色の液体で牛乳のたんぱく質の約20%を占めています。ホエーまたはホエイ、ホエイたんぱく質などと呼ばれています。
乳清たんぱく質にはさまざまな成分が含まれており、β-ラクトグロブリン、α-ラクトグロブリン、免疫グロブリン、ラクトフェリン、リゾチーム、乳塩基性たんぱく質(MBP:Milk Basic Protein)などが知られています。
ラクトグロブリンやラクトフェリンは免疫力の向上に関係しています。
また、MBPは骨を強くする成分として知られています。

●糖質

牛乳に含まれている糖質として、乳糖があります。
乳糖はグルコースとガラクトースが結合したもので、ラクターゼという小腸に存在する酵素によって分解されます。
しかし、このラクターゼの分泌が少ない人や消化機能が十分でない小児では、乳糖を分解することができず、乳糖が大腸まで届き、腸内の浸透圧を高めて水分量を増加させたり、大腸内の細菌が乳糖をエサとして利用する際にガスを発生したりすることがあります。これによって、お腹がゴロゴロしたり下痢を起こしたりします。このような症状を乳糖不耐症といいます。
この乳糖不耐症の人のための牛乳として、乳糖を分解した乳飲料があります。

●カルシウム

牛乳にはカルシウムが豊富

カルシウムは骨の成分となるだけでなく、筋肉運動や神経の働き、血液凝固などさまざまな働きを持っています。
カルシウムは牛乳だけなく、小松菜や小魚、などにも含まれていますが、
牛乳のカルシウムはほかの食品にくらべて吸収率が高いといわれています。

<牛乳のカルシウムの吸収率が良いのはカゼインホスホペプチド(CPP)のおかげ!>
・栄養素の吸収のほとんどは小腸で行われますが、この小腸下部はアルカリ性に傾いています。
 この状況でカルシウムはリンと結合しやすくなります。カルシウムとリンが結合すると不溶性となり、カルシウムを吸収できなくなります。 
 そこで、カゼイン分解物であるカゼインホスホペプチド(CaseinPhosphoPeptide)はカルシウムと結合することで、カルシウムとリンの結合を防ぎ、カルシウムの吸収率を良くします。

野菜にはシュウ酸や、穀類・豆類に含まれるフィチン酸および食物繊維が含まれています。
これらにはカルシウムの吸収を阻害する作用がありますが、牛乳にはこれらの物質がほとんど含まれていません。
これもカルシウムの吸収率を高める要因となっています。


今回は牛乳の種類と成分についてお話しました。
次回は、乳牛の種類や調理特性などについて触れたいと思います。

<参考>
・酪農ジャーナル電子版【酪農PLUS+】 酪農情報BOX   今さら聞けない基礎知識   その他   牛乳の殺菌方法
https://rp.rakuno.ac.jp/archives/knowledge/1079.html

・J-milk
乳たんぱくのすべて
https://www.j-milk.jp/report/study/h4ogb40000001268-att/h4ogb4000000128l.pdf
牛乳のはなし牛乳とカルシウム
https://www.j-milk.jp/findnew/chapter2/0407.html

・森永乳業  牛乳の知識
https://www.morinagamilk.co.jp/learn_enjoy/knowledge/index.html

<関連ページ>
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