いつまでも元気に 骨太ライフ!!

骨模型

著者 プロフィール
加藤里奈
一般社団法人健康栄養支援センター 理事/副会長
医療福祉栄養研究部コーディネーター
管理栄養士
加藤里奈

骨ってどんなもの?

骨には2つの働きがあります。
ひとつは骨格として体を支える働き、もうひとつはカルシウムなどのミネラルの貯蔵庫としての働きです。
成人の体内には約1kgのカルシウムがあり、そのうち99%は骨の中に蓄えられていて、残り1%が細胞や血液の中に常に一定の濃度で存在し、生命活動に関わる重要な働きをしています。血液中のカルシウム濃度は、腸管からの吸収と腎臓から尿への排出、そして骨からの出し入れで調整されています。

骨は代謝が活発に行われている器官で、古い骨細胞が壊されて血液に骨の組成分が放出されること骨吸収新しい骨細胞がつくられること骨形成といいます。
骨代謝は、休止期→吸収期→逆転期→形成期→休止期のサイクルで繰り返され、この一連の活動は、骨リモデリングと呼ばれ、1年間に20~30%の骨が新しく生まれ変わっています。

骨の組織は、たんぱく質の基質の周りに付着したミネラルの混合物でできており、ともに骨格の強度や柔軟性に寄与しています。骨の組織の約65%は、無機質なミネラルで、主にカルシウムリンでできています。残りの約35%は有機質のたんぱく質基質で、その約90%はコラーゲンです。コラーゲン繊維は互いによじれあって、骨のミネラルが付着する内部の骨組みを形成しています。残りの約10%は様々な非コラーゲン基質たんぱく質で構成されています。

骨量と最大骨量

骨量とは、基質及びミネラル両方の骨の量のこと。骨量は青年期を通して増加し、10代後半~20代に入るころにピークになります。そのころ骨の伸びは止まりますが、形や厚さは変化し、力学的なストレス(ウェイトトレーニングや体重など)を受けると、質量増加を続けます。リモデリングは一生続きます。34歳ころから、骨の再吸収率が骨の形成率を上回り、加齢とともに避けられない骨量減少が起こってきます。特に女性は閉経後、女性ホルモンのエストロゲンの減少に伴い、急激な骨量低下がみられます。

骨量の変化 グラフ 骨粗鬆症財団
図1 公益財団法人 骨粗鬆症財団HPより

骨粗鬆症とは?

骨粗鬆症骨の強度が弱くなり、軽い衝撃でも骨折を起こしやすくなる病気です。現在日本には約1300万人の患者がいるとされます。なんらかの原因によってリモデリングのバランスが崩れて、骨吸収が骨形成を上回り、骨量の減少が著しくなることによって起こります。
骨の強度=骨密度(骨に含まれるミネラルの量)+骨質(骨の質や構造、代謝状態)

骨粗鬆症の診断基準

(1)脆弱性骨折がある(低骨量(※YAMが80%未満など)が原因で転倒などの軽い衝撃によりおこる骨折)
(2)脆弱性骨折はないが、(YAM)の70%未満、または脊椎X線検査で骨粗鬆化が認められる

※YAM=若い人の骨密度の平均値

YAMの80%以上⇒骨密度正常

YAMの70~80%⇒骨量減少(骨減少症)

YAMの70%未満⇒骨粗鬆症

骨粗鬆症の危険因子

以下に挙げた危険因子は、2004年にWHOの研究グループが作成した「FRAX®(Fracture Risk Assessment Tool)」という評価ツールです。あてはまる危険因子の数から、将来、骨折が起こる確率をオンラインで計算することができます。
参考 シェフィールド大学  https://www.sheffield.ac.uk/FRAX/tool.aspx?lang=jp

骨粗鬆症の危険因子 FRAX WHO
図3 骨粗鬆症の危険因子

女性は、閉経後急激にリスクが増加します。女性ホルモンの中でも骨からカルシウムが溶け出すのを防ぐエストロゲンの分泌が減ることが、原因の一つです。

骨粗鬆症を予防するには

骨粗鬆症の予防や治療に勧められる栄養素は以下のようになります。

■食事編

骨粗鬆症の予防や治療に勧められる栄養素は以下のようになります。

 ★積極的に摂りたいもの 
 ・カルシウム:骨を形成する    男性700~800mg/日 女性600~650㎎/日 (700~800mg※) 
 ・ビタミンD:カルシウムの吸収を促進する  男女共 8.5μg/日  (10~20μg※)  
 ・ビタミンK:骨にカルシウムを沈着させるオステオカルシンというたんぱく質を活性化する
                       男女共 150μg/日  (250~300μg※)
 ・マグネシウム:骨芽細胞に働きかけてカルシウムの量を調節する  
                       男性320~370㎎/日、女性260~290㎎/日  
 ・ビタミンC: 骨や筋肉の結合に欠かせないコラーゲンの生成に必要  
                       男女共 100㎎/日   
 ・大豆に含まれるイソフラボンは、エストロゲン(骨形成を進める)に似た作用をする
 
 (参考:「日本人の食事摂取基準2020年版 18歳以上の推奨量又は目安量」、
     ※は「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」より)

特にビタミンDは最近の疫学研究で、日本人の男性約73%、女性の約90%が、不足もしくは欠乏しているという結果がでており、積極的に摂取する必要があります。同時に、ビタミンDは、皮膚にも存在し紫外線に当たることで活性化する栄養素です。紫外線量は緯度によって、また季節によっても大きく違いますが、本州であれば、夏で約10分、冬で約30分の日照時間を確保することが勧められます。

また、過剰摂取によりカルシウムの吸収を阻害するとされるものは、以下のようになります。

★できるだけ摂り過ぎを避けたいもの  
 リン(清涼飲料やスナック食品などに多く含まれる。)  
 食塩    カフェイン    アルコール

■運動編

骨は、運動して負荷をかけることで増え、丈夫になります。さらに筋肉を鍛えることで体をしっかりと支えることができ、バランス感覚がよくなり、転倒や骨折の予防にもつながります。目安は週3回以上、30分~1時間程度。ウォーキング、エアロビクスなど中等度の強度が効果的ですが、激しい運動でなくても散歩などで少しでも長く続けることが大切です。

ウォーキング 男女 運動

■生活編

食事編でも述べたように、ビタミンDは日光の紫外線に当たることでも作られます。日焼けを気にするあまり、過剰な日焼け止めの使用などは注意しましょう。

日光浴

コロナ禍で外出しにくい状況ではありますが、家の中にこもってばかりいると、体力や筋肉の衰えにつながり、特に高齢者ではフレイル(虚弱)へのリスクも高まります
屋外で、人と適切な距離を取りながら、散歩など日中に適度に外に出ることは重要です。

新しい生活様式の中でも、いつまでも自分の骨を守るために、できることから始めてみましょう。



参考:日本微量栄養素情報センター
   公益財団法人 骨粗鬆症財団
   厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020年版
   骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版

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