「ナス」活用術!意外な栄養、こんな使い方


一般社団法人健康栄養支援センター
医療・福祉栄養研究部所属 管理栄養士
 日下 千代子

HNSでは栄養士たちが集まり、一つの食材を掘り下げて調査、その食材を使った栄養たっぷりの美味しいレシピを考えて「食材塾」と言う勉強会を開催しています。今回は夏から秋に続き美味しいナス(ナスビ)です。種が少ない秋ナスの美味しさは格別と言えます。

ナスについて

ナスはインドの東部で生まれたと考えられています。暑いほうが育ちやすく、太陽の光も強いと色がきれいになります。インドから西へ向かったナスは、5世紀より前に古代ペルシャや、アラビア半島に伝えられました。東へ向かったものは東南アジア、チベットから中国と幅広い地域に広がりました。中国では1000年前からナスがつくられていたようです。
ヨーロッパでは13~15世紀になって、地中海沿岸でつくられるようになりました。食べるよりも花をみて楽しむためのものだったそうです。アメリカに持ちこまれてから、たくさんの品種がつくられました。
日本には、中国、朝鮮半島、東南アジアからのと大きくわけて3つのルートで入ってきました。奈良時代にはすでに作られていたと考えられています。平安時代の『延喜式(えんぎしき)』(注:1)という本にも、ナスの作り方が記されています。
(注:1)延喜5 (905) 年、醍醐天皇の命令により編集された。全50巻におよび、貴族の生活規範となったと言われている。

品種・種類

ナスの形状

日本のナスはほとんどが黒むらさき色ですが、白色のものもあります。形も丸型や長型など、いろいろの形がみられます。ほかにも世界では、白、緑、しま模様のナスもあります。

中長なす:長さ12~15cmで、「長卵形(ちょうらんけい)なす」ともいいます。とくに、昭和39年に生まれた「千両」「千両二号」というナスは、たくさん獲れて作りやすいので、日本全国に広がっています。

長なす:長さ20~25cmで、おもに西日本や東北で作られています。秋田県の「河辺長(かわべなが)」、岩手県の「南部長(なんぶなが)」、大阪府の「大阪長(おおさかなが)」、宮崎県の「佐土原(さどわら)」などがあります。

大長なす:長さ40~45cmで、肉質がやわらかなので「焼きなす」や「煮なす」にむきます。「久留米長(くるめなが)」や「博多長(はかたなが)」などがあります。暑さや乾燥に強いナスです。

丸なす:東北から北陸、関西でつくられています。肉質がしまっているので、田楽や煮ものにむきます。 京都府の「賀茂(かも)なす」、新潟県の「巾着(きんちゃく)なす」などがあります。

卵形なす:関東を中心にかつて最も多く出回っていました。濃いむらさき色でつやのある「真黒(しんくろ)」がよく作られていました。

小丸なす:重さ10~20gの小形のナスで、漬けものや煮ものに向きます。辛子づけで有名な、山形県の「民田(みんでん)なす」などがあります。

水なす
水なす

水なす:大阪の泉州地方で栽培されているナスです。あくが少なく名前のとおり水分を多く含みます。また、皮も柔らかく、生でも美味しく食べることができます。サラダや浅漬けに向いています。

米なす:ヨーロッパ、アメリカの品種を日本でつくりやすいように改良したもの。へたが緑色で、田楽やバター炒めにむきます。

白いナス
白ナス

白ナス:皮が白いナスの総称で、皮が白く、ヘタが緑色なのが特徴ですが、中には皮が青いものもあります。形は、米ナスの形に似たもの、細長いもの、卵のような形をしたもの、など様々です。皮は硬めで、果肉がぎっしりと詰まっていて、アクや、種子が少ないため、口当たりが良く食べやすいナスです。皮が白いので、花の色も白いと思えますが、紫色のナスと同様に紫色の花が咲きます。

出:グルメノートhttps://gourmet-note.jp/posts/5036

栄養素

栄養素の一覧表

選び方

皮の色が良くムラのないもの、つやのあるものがよく、ふっくらとしたものが美味しいです。ヘタに比べて実が小さいものはまだ熟していません。
持ってみてずっしりと重いものが良いでしょう。
傷がなく、ヘタの切り口が新しいかどうかもポイントです。また、新鮮なものはヘタのとげが痛いくらいにとがっています。

保存方法

ナスは暖かい時期に採れる野菜なので、冷蔵庫に入れておくと低温障害を起こしやすく、硬くしまって傷みも早くなるので、袋に入れて冷暗所に保存し、なるべく早く使いきりましょう。

ナスの効用

ナスの紫紺色はナスニンと呼ばれるポリフェノールの一種、アントシアン系の色素で、強い抗酸化力があると言われ、ガンや生活習慣病のもとになると言われる活性酸素を抑える力があるようです。
ナスには「コリンエステル」(注:2)が含まれており、血圧を下げる効果があると言われています。
(信州大学学術研究院(農学系)中村浩蔵准教授)

(注:2)コリンエステル:コリンと有機酸がエステル結合した化合物群。体内の神経伝達物質として知られるアセチルコリンはその代表的な化合物。ナスにはアセチルコリンが含まれており、機能性関与成分はナス由来のコリンエステル (アセチルコリン) となります。これは胃や腸など消化器官を介して自律神経に作用し、ストレス性の交感神経活動を抑制して、血圧や気分を改善することが明らかとなっています。
(出:生物系特定産業技術研究支援センター)

味と食感

くせのない淡白な味わいで、火を通すとなめらかな食感が特徴です。品種により様々な調理法があります。
油とも相性がよいのは知られており、料理にジャンルを問わずに使え、日本での旬は夏ですが、市場には年中出回っており、定番の野菜となっています。

こんな使い方も

お盆のナスとキュウリのお飾り。
お盤のナス(牛)とキュウリ(馬)お飾り

お盆のお飾りにキュウリとともによく使われます。野菜で作った動物は「精霊馬」と言われ、キュウリで作られたものは「馬」でナスが「牛」でセットで飾られます。馬はご先祖様が早く帰ってこられるように足の速い馬を、牛はご先祖様が帰られるときに少しでもこの世に長く留まっておられるようにと言う願いが込められています。

ナス(茄子)とナスビとどちらが正しいか

平安時代は「奈須比」と呼称されており、それが変化したこと等々の謂れがホームページ上では様々に記述・掲載されています。
関西では「なすび」「おなす」と言う言い方が多いようです。関東では「なす」といわれることが多く、江戸時代に始まったようです。
ナスは「成す」に通じるということで、言葉遊びの好きな江戸っ子らしい説です。
初夢として「一富士、二鷹、三茄子」と言われ、江戸時代には正月のナスが高値で取引されたそうです。
江戸時代には、初なすを季節に先駆けて少しでもはやく作ろうとする技術も始まりました。あまりに高い値段で売り買いされたために、幕府が禁止令を出したこともありました。


ナスのレシピ

調理の前に

焼く、蒸す、煮る、炒める、揚げる、漬けもの、生食と、どんな調理方法でもおいしく食べることができる野菜です。
ナスはアクとなるクロロゲン酸を含んでいるので、切ってから時間をおくと、茶色く変色してきます。3%程度の塩水に漬けてアク抜きをしてから調理します。漬けすぎると風味を損ねますので、漬け時間の目安は5~10分くらいにしましょう。
塩をふり、出てきた水分をふいてアクを抜くこともできます。調理によってはあく抜きしなくても問題のない場合があります。
油との相性がよく、加熱することで甘みと旨みが増します。浅漬け、焼きなす、素揚げ、田楽、麻婆茄子、味噌炒め、煮びたし、カポナータ(イタリア、シチリア地方の甘酸っぱい味の野菜料理)、ムサカ(ギリシア、トルコ、バルカン半島一帯で作られる)羊などの挽肉、ナス、トマト、ジャガイモなどを重ねてチーズをのせオーブンで焼いた料理)など、和・洋・中・エスニックのさまざまな料理に利用できます。
煮物や炒めものに用いる際も一度さっと油通しすると色も味もよくなります。

焼きナス

ナスはヘタをとりのぞき、つまようじなどで皮に5~6ヵ所くらい穴をあけます。(焼いたときに破裂しません)
ガスレンジにグリルがあれば強火で全面すべてに焦げ目がつくほど焼きます。グリルがない場合は焼き網で焼くと良いでしょう。
レンジの場合は洗った後、ラップで包み600ワットで3~4分程度加熱します。取り出すときは火傷しないように気をつけます。
焼きあがれば、バットなどにとり、粗熱をとります。水につけて粗熱をとる方法もありますが、時間があれば水に取らない方が旨味をのがしません。
皮は下から竹串などでむくときれいに向けます。

焼きナスの料理3種:鶏ひき肉みそあん、黒オリーブのキャビアもどきソース、オクラソース
上から時計回りに。鶏ひき肉みそあん、黒オリーブのキャビアもどきソース、オクラソース。

焼きナスのバリエーション おつまみ3種

いずれも、食べよい大きさに切ったナスビにトッピングしたもの。冷たくしても、常温でもどちらでもおいしくいただけます。
食べる時はナスに絡めたり、トッピングのまま食感の違いを楽しんでみてください。

鶏みそあん

〔材料〕
・焼きナス        1本分
  Ⓐ鶏ひき肉        50g
  Ⓑ生姜ミジン切り     大さじ 1
  Ⓒ味噌          大さじ 1
  Ⓓみりん         小さじ 1
  Ⓔ酒           小さじ 2
・粉山椒          適宜
〔作り方〕
①Ⓐ~ Ⓔを、冷たいままのフライパンにいれて、鶏ひき肉に調味料をなじませる
② 中火にかけ、煮立ってきたら水分が飛ぶまで煮詰める
③ 焼きナスを食べやすい大きさに切って鶏ひき肉を載せ、粉山椒をふる

オクラソース

〔材料〕
・焼きナス        1本分
・オクラ         2本
・オリーブオイル     大さじ 1
・醤油          小さじ1/2
・削り節         適宜
〔作り方〕
① オクラを2~3分ゆでて冷ます(水に取らない方が美味しい)
② オクラの種をとり、細かく刻む
③ ②にオリーブオイルと醤油を加え粘りがでるまでよくかき混ぜる
④ 焼きナスを食べやすい大きさに切ってオクラソースをのせ、花カツオをふる

黒オリーブのキャビアもどきソース

〔材料〕
・焼きナス      1本分
・黒オリーブ    3~5個
・アンチョビ     1切れ
・オリーブオイル  小さじ1
・ピンクペッパー   適量
〔作り方〕
① 黒オリーブをミジン切りにする
② アンチョビをつぶすように細かく切る
③ ①と②を混ぜる
④ 焼きナスを食べやすい大きさに切って③をのせ、ピンクペッパーを粗く砕いてのせる
  ★トーストやサラダにもよくあいます

フライパンでナスを蒸し焼きした仕上がりの状態
このくらいになるまでじっくりと蒸し焼きにします

ナスの蒸し焼き

ナスは油と相性が良いですが、じっくり弱火で蒸し焼きにすると油は少なくてすみます。色よく仕上げたいときは強火でさっと炒めるのも方法の一つですが、ナスの甘味を引き出すには少し時間がかかりますが、蒸し焼きにするとよいでしょう。
ナスはヘタを取り除き一口大の乱切りにします。油はナス中くらい(80~100gくらい)で大さじ1杯くらいの分量で全体に油を回すように中火で炒め、その後、ふたをして弱火で蒸し煮にします。
時々様子を見ながら10~20分くらい時間をかけて蒸し煮にすると甘味が出ます。
特売の時などたくさん作っておき、調味料や合わせるものの味を変えて楽しみましょう。

蒸し焼きナスの料理3種:いずれも鶏ひき肉をベース。左から和風、中華風、洋風
蒸し焼きナス3種:いずれも鶏ひき肉をベース。左から和風、中華風、洋風。

蒸し焼きナスの和風・洋風・中華風 3種

★ 豚肉、鶏肉、牛肉の小間切れや挽肉などやツナ缶(オイル漬けの場合はそのオイルで蒸し炒めをすると良い)、鯖缶(水煮)など、好きなものを利用して味を変えると目先が変わります。
★ナスと合わせるものはナスの半量から1/3~1/2量くらい(重量比)がナスの旨味を損ないません。

和風味

〔材料〕
・ナスの蒸し焼き      1本分
・お好みの挽肉などⒶ   30~50g
〔調味料〕
・しょうゆ       小さじ2
・みりん        小さじ1
・酒          小さじ2
〔下ごしらえ〕
Ⓐに下味をつけておく。塩・こしょう少々、しょうゆ:小さじ1、酒小さじ1
〔作り方〕
① 冷たいテフロン加工のフライパンにⒶと調味料を入れ、中火にかける
② 火が半分くらい通ったら、ナスの蒸し焼きと調味料を加えまんべんなく火を通す

洋風味

〔材料〕
・ナスの蒸し焼き     1本分
・お好みの挽肉などⒶ   30~50g
〔調味料〕
・牛乳           50cc
・顆粒スープの素    小さじ1/2
・コーンスターチ     小さじ1
・塩          小さじ1/2
・こしょう         少々
〔下ごしらえ〕
① Ⓐに塩・こしょう少々で下味をつけておく
② 顆粒スープの素を大さじ1のお湯で溶いたものと牛乳・コーンスターチをよく混ぜておくⒷ
〔作り方〕
① 冷たいテフロン加工のフライパンにⒶを中火にかける
② 火が通ったら、ナスの蒸し焼きを加え、まんべんなく火を通す
③ Ⓑを加えとろみがつくまで火を通す

中華味

〔材料〕
・ナスの蒸し焼き 1本分
・お好みの挽肉などⒶ 30~50g
〔調味料〕
・しょうゆ    小さじ2
・砂糖      小さじ1
・酢       小さじ2
・水       小さじ1
・片栗粉    小さじ1/2
〔その他〕
・ごま油(最後の仕上げに利用)
・一味唐辛子 少々(お好みで小さじ1/2まで)
〔下ごしらえ〕
❶ Ⓐに下味をつけておく。塩・こしょう少々、しょうゆ:小さじ1、酒小さじ1
➋ 調味料を全て混ぜておくⒷ
〔作り方〕
① 冷たいテフロン加工のフライパンⒶを入れ、中火にかける
② 火が半分くらい通ったら、ナスの蒸し焼きと調味料Ⓐを加えまんべんなく火を通す
③ Ⓑを良くかき混ぜてから、②に合わせる

ナス1個で3品を作る

〔材料〕
・ナス    1本(120g前後)
〔下ごしらえ〕
❶ ナスのヘタ1㎝くらいのところで切る → ナスのへたのバター焼き用
➋ ナスの皮をやや厚めにむく → 皮はきんぴら用 果実は胡麻和え用

ナス1本で3品の料理:きんぴら、胡麻和え、バター焼き
ナス1個で3品:上段左:きんぴら、上段右::胡麻和え、下段:バター焼き

バター焼き

〔作り方〕
① ナスのヘタを縦二つに切り、切り込みを3~4本入れ、塩を一つまみすりこみ、水が出てきたら、キッチンペーパーで水分をふき取る
② 冷たいフライパンに小さじ1のバターを入れ、ナスの実を下にして弱火でゆっくりきつね色になるまで火を通す

きんぴら

① 皮を長さ3㎝幅3ミリくらいの細切りし、小さじ1の油でゆっくり炒める
② しょうゆ、酒、みりんを同量の割合で加え、水分が飛ぶように炒める(それぞれ小さじ1/2)
③ 好みで一味唐辛子を添えていただく

胡麻和え

① ナスを縦半分に切り水に放しアクを抜く
② 耐熱皿に入れ、ラップをふんわりかけて、電子レンジ(600w)で4~5分加熱する
③ キッチンペーパーに取り出し粗熱がとれたら、食べやすい大きさに手で裂く
④ すりごま大さじ1、しょうゆ小さじ1、酒小さじ1で③を和える

ナスのはちみつ煮を水切りヨーグルトのトッピングしたデザート
水切りヨーグルトにトッピング

ナスのデザート

〔材料〕
・ナス(できたら、種の少ないもの) 1本
・はちみつ ナス重量の50%
〔作り方〕
① ナスの皮を薄くむく(捨てない細かく刻む)
② ナスは1㎝くらいの角切りにする
③ 小鍋にナスとはちみつをいれ、弱火でふたをして煮る
④ ナスが煮えたら、ふたをとり、皮をいれ強火で水分をとばす(長く煮ると色が悪くなる)
〔いただき方〕
・アイスクリームやヨーグルトのトッピングなど

関連ページ
微生物が大活躍!発酵のしくみ
いつまでも元気に骨太ライフ