【食材シリーズ】かぼちゃ:おいしく食べよう!かぼちゃの種類と栄養

著者 プロフィール
医療・福祉栄養研究部所属 管理栄養士
M・I

かぼちゃ
かぼちゃ

かぼちゃは野菜の一つですが、甘味があるためお菓子作りにも使える、利用範囲の広い食品です。
果肉の鮮やかなオレンジ色や、皮ごと使えば緑色をプラスできたり、食卓の彩りにも活躍してくれます。
また、食物繊維やミネラルのカリウム、ビタミンC、カロテンなども含んでおり栄養面からもおすすめできる食品です。
今回は、かぼちゃの種類や栄養素について、お話しようと思います。

かぼちゃの特徴

かぼちゃとは

かぼちゃ畑

かぼちゃは、漢字で南瓜、英語ではSquashといいます。
日本でよく使用されるpumpkinは、皮がオレンジ色の一部のかぼちゃに使用される呼び方のようです。
漢字からわかる通り、かぼちゃはウリ科の野菜です。
ウリ科の野菜は、つるを伸ばして成長する特徴を持っています。
ウリ科の仲間としてはきゅうり、ゴーヤー、すいか、ひょうたん、へちま、とうがんなどがあります。

かぼちゃの旬と追熟

かぼちゃの旬は夏です。
だいたい7~8月に収穫されます。ただし、収穫したてのかぼちゃがすぐに出荷されるわけではありません。
収穫されてからしばらく涼しいところで貯蔵されるのです。この貯蔵している間に甘味が増えます。

<かぼちゃの甘味が増えるしくみ>
かぼちゃはでんぷん分解酵素を持っています。貯蔵されている間にこの酵素が働き、でんぷんが麦芽糖などに分解されることで甘味が増します。この作業を追熟(キュアリング)といいます。
だいたい2週間~1か月ほど追熟されているようです。
ちなみに、加熱をするとこの酵素はより活発に働きます。
かぼちゃを生で食べることはほとんどありませんが、加熱をすることでもかぼちゃの甘味が増加しているのです。

かぼちゃと冬至

かぼちゃと冬至の関係

かぼちゃは夏野菜ですが、冬至に食される食品としても知られています。
そもそも冬至とは、北半球において日の出から日の入りまでの時間がもっとも短い(=夜が長い)日のことです。冬至がいつかは天文学的に決まり、毎年、12月21日か22日です。
1年で最も日が短いため太陽が生まれ変わると考えられ、弱まった太陽の力が甦ってくることから、冬至を境に運が向いてくるとされています。
冬至には「ん」のつくものを食べると「運」が呼びこめるといわれています。にんじん、だいこん、れんこん、ぎんなん、そしてなんきん(かぼちゃ)など。「ん」のつくものを運盛り といい、縁起をかついでいたのです。
また、かぼちゃはビタミンCやカロテンが含まれているので、風邪の予防にも役立ちます。本来の旬は夏ですが、長期保存ができるため、寒くなる季節に栄養をしっかり摂るための知恵でもあるのです。

かぼちゃの種類

かぼちゃには大きく3種類あり、西洋かぼちゃ日本かぼちゃペポかぼちゃがあります。

西洋かぼちゃ

現在、日本で主流となっているかぼちゃは西洋かぼちゃです。
果肉は濃いオレンジ色のものが多く、加熱するとほくほくし、甘味が強くなります
西洋かぼちゃにはさらに種類があります。黒皮栗かぼちゃ、坊ちゃんかぼちゃ、鈴かぼちゃ、ロロンかぼちゃ、長かぼちゃ、赤皮栗かぼちゃ、コリンキーなどです。
ここからさらに、地域でブランド化されたものや、種苗会社が開発した品種などがあります。

●黒皮栗かぼちゃ
西洋かぼちゃのうち、一般的に流通しているかぼちゃです。1.5~2.0kgほどの大きなかぼちゃで、皮は濃緑色、表面に溝があまりありません。
みやこ(サカタのタネ)、えびす(タキイ種苗)、ほっこりえびす(タキイ種苗)、九重栗(カネコ種苗)、くりゆたか(みかど協和)などの品種があり、ホクホク感の強いかぼちゃが多くなっています。


●坊ちゃんかぼちゃ
重さが500g前後の手のひらサイズのかぼちゃです。サイズを活かして、中身をくりぬき、グラタンやプリンなどを流し入れ、まるごとかぼちゃの料理やお菓子を作ることができます。
●鈴かぼちゃ
未熟なかぼちゃを収穫した、生食向けのかぼちゃです。シャキシャキした食感を楽しむことができます。


●ロロンかぼちゃ
ラグビーボールのような形が特徴で、ここ数年のラグビーブームにより注目が高まったようです。味や食感などは黒皮栗かぼちゃと似ています。
●長かぼちゃ
ヘチマのような形のかぼちゃです。味や食感は黒皮栗かぼちゃと似ていますが、形に特徴があるため、輪切りにしたりして形を活かした料理を作ることができます。
長かぼちゃにはいろいろな品種があり、宿儺(すくな)かぼちゃ、かんりゅうなどがあります。
このうち、宿儺かぼちゃは岐阜県で古くから栽培されているもので、皮の色が白っぽい緑色であることが特徴宇。現在高価なブランドかぼちゃとして扱われています。

長かぼちゃ  えびすかぼちゃ  ロロンかぼちゃ

●赤皮栗かぼちゃ
皮がオレンジ色、形はたまねぎのようなかぼちゃです。金沢の伝統野菜「加賀野菜」の打木赤皮甘栗かぼちゃが代表です。味や食感は日本かぼちゃに近く、ホクホクというより水分が少し多めのしっとりした味わいです。完熟させず、若取りすることでクセが少なく生食できるます
●コリンキー
皮は黄色、500g~1㎏程度の小さいかぼちゃです。完熟させず、未熟な状態で収穫されます。クセが少なく生食できるかぼちゃです。

日本かぼちゃ(東洋かぼちゃ)

日本かぼちゃ

表面に凸凹があり、果肉は黄色に近いものが多いです。
水分が多くホクホクというよりしっとりしており、甘味も強くありません。
菊座かぼちゃ、鹿ケ谷かぼちゃ、バターナッツなどがあります
●菊座かぼちゃ
輪切りにすると菊の花のように見えるのが特徴です。小さい手のひらサイズのものに、小菊かぼちゃがあります。
勝間(こつま)なんきん
なにわ伝統野菜の一つ。勝間なんきんの栽培が途絶えてから60年以上経った2000年7月に、種が偶然発見されたことをきっかけに復活したことで話題のかぼちゃです。
●鹿ケ谷かぼちゃ
京野菜の一つ。ひょうたんのような形で真ん中にくびれがあります。皮はコブのような凸凹がたくさんあります。
●バターナッツ
南アメリカ大陸原産とされていますが、日本かぼちゃの1種です。縦長のひょうたんのような形をしており、皮は薄いオレンジ色、つるつるしています。ナッツのような風味とねっとりとした果肉で、スープによく利用されます。

ペポかぼちゃ

おもに観賞用の小さなかぼちゃです。丸い形やひょうたん、細長など形は様々で、皮の色も緑や黄色、オレンジ、白など様々です。ペポかぼちゃのうち、そうめんかぼちゃ、ズッキーニは食用として食べられているかぼちゃです。
●そうめんかぼちゃ
金糸瓜ともいわれ、楕円形をした皮が薄い黄色の南瓜です。加熱をすると糸のように果肉がほぐれます。シャキシャキとした食感があり素麺のようにつゆにつけて食べたり、酢の物やサラダなどに利用できます。
●ズッキーニ
きゅうりのような見た目で、細長い形、皮は緑色のものが主流です。他に、丸い形の物、皮が黄色のものもあります。完熟させず、未熟な状態で収穫されます。

かぼちゃの栄養

以下は、日本かぼちゃ、西洋かぼちゃ、ペポかぼちゃ(そうめんかぼちゃ)の栄養成分をまとめたものです

かぼちゃの成分
かぼちゃの成分

かぼちゃの主成分は炭水化物ですが、種類によって差があります。
日本かぼちゃやペポかぼちゃ(そうめんかぼちゃ)は、水分が多く炭水化物が少なめでエネルギーも低いです。
西洋かぼちゃは炭水化物が多くエネルギーが高めですが、他の栄養素も多く含んでおり、かぼちゃの種類の中では最も栄養価が高くなっています。
一般的に食べられているかぼちゃは西洋かぼちゃなので、西洋かぼちゃに特に多い栄養成分について解説していきます。
ちなみに、この栄養成分はかぼちゃの皮も含めたものです。かぼちゃの皮を取り除いてしまうと、食物繊維やミネラル、ビタミンの栄養価は低くなります。

●食物繊維

かぼちゃの煮物

食物繊維は、腸内環境を整え便秘を予防・改善する働きがあります。
また、糖質や脂質の吸収を抑え生活習慣病の予防・改善にも役立ちます。
特に皮の部分に多く含まれているため、ぜひ皮ごと食べましょう

●カリウム

蒸す

カリウムはミネラルの1種です。
体内の余分なナトリウムを排泄することで、血圧の上昇を抑える働きがあります。
カリウムは水溶性のため、ゆでると減ってしまいます。カリウムを摂りたいときは、蒸す、スープ、ソテーなどの調理方法がおすすめです。

●β-カロテン、ビタミンA(レチノール)

体を守る栄養素がいっぱい

β-カロテンは赤橙色の色素です。かぼちゃの果肉の黄色はβ-カロテンによるものです。
そして色素として存在するだけでなく、健康にも役立ちます。
β-カロテンは体内で必要な分だけビタミンA(レチノール)に変換され、ビタミンA(レチノール)として働きます。
ビタミンA(レチノール)は肌や粘膜の健康を保つ働きがあります。冬になると肌や粘膜が乾燥して肌荒れや喉の痛みが起こりがちですが、そんなとき、ビタミンA(レチノール)が役立ちます。さらに、β-カロテンには抗酸化作用がありストレスから体を守り生活習慣病などを予防してくれます。
β-カロテンは脂溶性であるため、油脂と一緒に調理すると吸収が良くなります。

●ビタミンE(α-トコフェロール)

炒める

ビタミンEにも抗酸化作用があります。
特に脂質の酸化を予防する働きがあり、細胞膜の健康を保つことに役立っています。
脂溶性であるため、油脂と一緒に調理すると吸収が良くなります

●ビタミンC

ビタミンCにも抗酸化作用があります。
また、コラーゲンの合成を助けたり鉄の吸収を高める働きがありま。
コラーゲンは肌を構成するたんぱく質であり、健康な肌を作るためにはビタミンCが欠かせません。
ビタミンCは水溶性であるため、ゆでると減ってしまいます。
ビタミンCを摂りたいときは、蒸す、スープ、ソテーなどの調理方法がおすすめです。

かぼちゃの調理

かぼちゃは生で食べることはできない?

かぼちゃは基本的に生で食べることはできません。なぜでしょうか?
それは、かぼちゃの主成分が炭水化物のでんぷんだからで
でんぷんは、生で食べることはできないため、加熱が必要です。
かぼちゃを加熱すると、生のでんぷん(βでんぷん)が糊化でんぷん(αでんぷん)になり、食べることができる状態になります。
これは、例えば米を生で食べることはできませんが、炊くことで加熱するとごはんとして食べることができるしくみと同じです。

かぼちゃの食べ方

●西洋かぼちゃ
加熱するとホクホク、甘味が強くなることが特徴であり、
煮物、スープ、炒め物、サラダ、スイーツなどさまざまな料理に使うことができます。
また、ミネラルやビタミンも多いため、それらを効率よく摂ることができるような調理の工夫をすると良いでしょう。
例)かぼちゃスープ
かぼちゃを油で炒め、牛乳や豆乳を注ぎ、スープにします。
油で炒めることでβ-カロテンやビタミンEの吸収が良くなります。
また、スープにすることで水溶性のビタミンCやカリウムを効率よく摂ることができます。

●日本かぼちゃ
加熱をしても甘味があまり強くならないため、スイーツなどには向いていません。
その代わり、さっぱりとしたみずみずしい味わいを楽しむことができます。
例)かぼちゃの煮物 そぼろあんかけ
かぼちゃを煮て、仕上げにそぼろのあんかけをかけます。

かぼちゃにはさまざまな種類があります。
また、抗酸化作用のある栄養素を含んでおり、健康にもうれしい食材です。
ぜひ、かぼちゃの種類や栄養素を活かして、寒い冬を乗り越えていきましょう。

<参考>
・中野明雅 編著;誠文堂新光社;機能性野菜の教科書
・旬の食材百科 カボチャ 
   カボチャ(南瓜/かぼちゃ)の品種と特徴:旬の野菜百科 (foodslink.jp)
・野菜情報サイト 野菜ナビ かぼちゃ
   かぼちゃ カボチャ 南瓜 (yasainavi.com)

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