栄養士から受験生のお母さんへ(3)|睡眠は土台作りの鍵!

著者:尾崎小百合
受験栄養Lab.所属 管理栄養士

勉強しやすい季節になりましたね。
お子さんは朝気持ちよく起きられていますか?
「朝ごはん」や「規則正しい生活」は少しでも取り入れられてますか?
3回目となりました今回は睡眠について考えてみましょう。
大切なのは十分理解されておられると思いますが、さらに深く知ることでもっと睡眠の大切さがわかると思います。
ちなみに、部活動にも力をいれていた我が子は23時前後にはお布団に入り、約7時間の睡眠をとる生活を高校3年間していました。
1,2年生の時は少しでも体を大きくしたいために、3年生からはよりよいパフォーマンスのために、という思いだったようです。
寝る前には日本史などの暗記ものに目を通す、スマホは直前まで見ないなど、睡眠の重要性を理解し、毎日の習慣が自分を作り上げる、をまさしく実践していました。

■なぜ睡眠が必要?

睡眠には、心身を修復したり、脳を休めたり、記憶を整理したりと、様々な働きがあります。
一般的に深い眠りと言われる「ノンレム睡眠」と浅い眠りの「レム睡眠」のサイクルを一晩で4〜5回繰り返しています。
「ノンレム睡眠」は脳を休息させ、成長ホルモンを分泌し、生体機能を整える効果があります。
一方で「レム睡眠」には、体を休養させながら、脳は活動して、思考の整理、記憶の定着の働きがあります。
最も深く眠っているのが1回目の「ノンレム睡眠」。
眠り始めてからの約3時間(とくに最初の90分程度)に脳下垂体から成長ホルモンが多く分泌されるので、とても重要な時間です。
成長ホルモンの分泌が適切に行われることで、人は寝ている間に脳や身体の疲労回復や、成長期では体が作られるのです。

■睡眠と記憶

記憶はノンレム睡眠とレム睡眠の両方の時間に脳に固定されていきます。
固定した記憶を自在に引き出すには、新しい記憶と既存の記憶の関連づけと、記憶を思い出すきっかけになる「索引」という機能が必要になります。
レム睡眠のときに記憶の関連づけと索引が身につきます。
したがって、固定した記憶を引き出すにも睡眠が必要になるのです。
理想的な睡眠は人それぞれですが、成長期である高校生は最低7時間くらいは睡眠時間を確保したいですね。
お布団に入ってから眠りに就くまでの時間なども考慮してくださいね。

■睡眠とメラトニンと光

睡眠とメラトニンと光
 眠りのメカニズム 出典:e-ヘルスネット 厚生労働省

睡眠にかかわるホルモンはメラトニン、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)、成長ホルモンなどあります。
メラトニンには体温を下げ、成長ホルモンの分泌を促す作用があります。
体温が下がると、自然な睡眠に入りやすくなります。
メラトニンにはもう一つコルチゾールの分泌を抑えるという大事な働きがあります。
睡眠中にはコルチゾールというホルモンが分泌され、起床時に最大濃度となります。
コルチゾールは朝起きたらすぐに活動できるために欠かせないホルモンです。
コルチゾールは過剰に分泌し続けると脳や身体に大きな負担となります。
また、コルチゾールは免疫機能を抑制する働きがあるといわれているので、過剰に分泌し続けると風邪を引きやすくなったりします。
メラトニンはこれらのことを防いでくれるのです。
良質な睡眠のためには、メラトニンを規則正しく分泌させればいいのですが、現代の生活環境ではなかなか出来ません。
メラトニンは、起きて光を浴びてから約14~15時間後くらいに分泌が始まります。
このリズムは、体内時計で決まっていますが、光にも強く影響されます。

とくにブルーライトと呼ばれる青色の成分を含んだ光を浴びると、メラトニンの分泌は抑えられます。
ブルーライトは昼間の太陽の光や蛍光灯に含まれているため、昼間、こうした光を浴びている間は、覚醒状態を維持できるのです。

血中メラトニン量
健康な男女20人が就寝前4時間にタブレットの端末もしくは印刷物で読書した場合、
血中メラトニン量を比較すると、前者はメラトニンが増加する時間が遅く、深い睡眠を
得るまでに時間がかかっている。
出典:Proc.Natl.Acad.Sci.USA;112,4,1232-1237,2015
寝る前のスマホは睡眠の妨げ

よく寝る前にスマホやPCを見ると睡眠の妨げになると言われていますが、これは画面に使われる照明がブルーライトを多く発しているので、メラトニンの分泌を抑制してしまうからです。
寝る前にスマホなどのデジタル機器の光を浴びたり、SNSやゲームを楽しむと交感神経が優位になり眠りにつきにくいです。
我が子は高校3年生になってからは、夜遅くに見たいTV番組や動画などは、朝起きて見るというルールを自分で作っていました。
すると朝起きる楽しみも出来て、目覚めもスムーズでした。

規則正しい生活

■メラトニンの材料

メラトニンは下図のように、トリプトファン→セロトニン→メラトニンと生成されます。
セロトニンが体内に存在する量は腸が約90%、血中が約8%ですが、脳内ではわずか約2%となっています(脳幹の縫線核で合成)。

メラトニンの材料
出典:ファーネットマガジン

注意していただきたいのは、必須アミノ酸のトリプトファンを大量に摂取しても、大量にメラトニンが生成されるわけではありません。
またトリプトファンだけでなく、生成に必要なナイアシン、葉酸、鉄、マグネシウム、ビタミンB₆なども必要です。
トリプトファンは大豆製品、肉、魚、乳製品、卵、ナッツ類、ごま、バナナなど多くの食品に含まれています。

鉄を多く含む食品1食分の目安量(mg)含有量(mg)
あさり水煮缶詰308.9
鶏レバー605.4
牛ヒレ肉1002.5
カツオ801.5
鶏卵1個601.1
小松菜(ゆで)801.7
枝豆(ゆで)501.3
木綿豆腐1001.5

出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

かつおのたたき
鉄やビタミンB₆を多く含む食品例:かつおのたたき
ビタミンB6を多く含む食品1食分の目安量(mg)含有量(mg)
カツオ刺身(5~6切れ)1000.85
くろまぐろ刺身(5~6切れ)1000.76
鮭1切れ1000.64
豚ヒレ1000.54
鶏ささみ800.48
バナナ1本1000.38
さつまいも1/2本1000.26

出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

バナナ
ビタミンB₆を多く含む食品例:バナナwithヨーグルト
葉酸を多く含む食品1食分の目安量(μg)含有量(㎍)
鶏レバー60780
いちご5個10090
ほうれん草(ゆで)8088
味付け海苔580
グリーンアスパラ(ゆで)4072
小松菜(ゆで)8069
ブロッコリー(ゆで)5060
豆乳21059

出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

アスパラガス
葉酸を多く含む食品例:アスパラ
ナイアシンを多く含む食品1食分の目安量(mg)含有量(mg)
たらこ 中1/2腹4019.8
まぐら刺身(5~6切れ)10014.2
鶏むね肉(皮なし)10012.1
10011.7
鶏ささみ809.4
ぶなしめじ1006.1
ピーナッツ(炒り)203.4
アボカド1002.0

出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

■お母さんができること

まずは、食事です。
前回からお伝えしている「朝ごはん」を摂りましょう。
ごはんとお味噌汁だけでもいいのですが、魚や納豆、豆腐、牛乳など必須アミノ酸のトリプトファンを多く含む食品もプラスしてみましょう。
夕食が夜食の時間になるお子さんも多いと思います。
夜食についてはVol.1栄養士から受験生のお母さんたちへ|難関校受験合格に役立つ方法 (1)を参考にしてください。
次に生活リズムの管理です。
朝ごはんが食べられる時間に起こす、睡眠の質を低下させるため夕方に寝させない、シャワーではなく入浴もできるように、そして睡眠時間の確保ができるよう寝る時間も気にしてください。
当たり前のようですが、「規則正しい生活」が自分を作り上げるのです。
私は子供が寝るのを確かめてから寝るようにし、そして朝ごはん、お弁当のために早起きしていました。
そんなことしていたら睡眠不足になるよと言われましたが、まさに睡眠不足でした。長い期間、睡眠不足でしたが、受験が終わった今は、しっかり睡眠時間を取れています。
ですので、おススメできるわけではありませんが、こんな母の姿を見て、子供たちは頑張ってくれたのではないかと思っています。

■最後に

十分な睡眠時間を取ることの大切さについて、最後にもう一度ポイントをまとめておきます。
日中のパフォーマンスを上げてくれる
記憶を整理するので、前日に覚えたことが長期記憶として定着しやすくなる
体の免疫力が高まるので、風邪や病気にかかる可能性が低くなる
寒くなってくると体調を崩しやすくなります。いつも通り過ごせることに気を配って下さい。
毎日の習慣が自分を作り上げますよ!

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