【食材シリーズ】キャベツ:素敵な生産リレー!キャベツの種類と栄養
著者 プロフィール
医療・福祉栄養研究部所属 管理栄養士
M・I
キャベツは1年中店頭で見かけますが、春になると春キャベツや芽キャベツが出回ったり、サラダによく使用される紫キャベツ、葉が縮れたちりめんキャベツなどさまざまな種類があります。今回はキャベツについて解説していきます。
Contents
キャベツの特徴
●キャベツとは
キャベツはアブラナ科の野菜で、野生種の「ケール」から分化したものといわれています。
アブラナ科の仲間としては、だいこん、ブロッコリー、カリフラワー、小松菜などがありますが、ブロッコリーやカリフラワーもケールを原点とし分化したものです。
日本にキャベツが伝わったのは江戸時代にオランダ人によって持ち込まれたことがきっかけといわれています。
当時は鑑賞用の葉ボタンとして栽培されており、現在の丸く結球した形になったのは明治時代頃です。明治時代、ある銀座の洋食屋さんがカツレツに生のキャベツの千切りを添えたことでキャベツは広く食されるようになったようです(諸説あり)。
●旬・産地
キャベツにはいろいろな種類があり、また、季節によって産地や種類がリレーのように移り変わることで1年中市場に出回っています。
日本で最も食されているキャベツは冬キャベツで、11月~2月頃が旬です。
春には春キャベツという種類が出回ります。夏になると、冬キャベツが品種改良された夏秋キャベツが市場に出回ります。
このようにして、1年中キャベツを手に入れることができますが、収穫量が多くなるのは冬であるため、冬が価格的にも手に入りやすい時期となります。
キャベツの種類
日本で出回るキャベツには、冬キャベツ、春キャベツ、グリーンボール、芽キャベツ、紫キャベツなどがあります。
●冬キャベツ(寒玉キャベツ)
日本で生産されるキャベツの約60%は冬キャベツです。
夏に種を蒔き、冬に収穫する種類で、寒玉キャベツとも呼ばれています。糖度はほかの時期に収穫されるものより高めです。
形が扁平で色は薄く、固く結球します。加熱をしても煮崩れしにくく、生食・加熱どちらにも向いています。
産地
生産量は群馬県と愛知県、千葉県、茨城県が多いのですが、関西と関東では市場に出回っているキャベツの産地が異なります。
関西:11~6月は主に愛知や関西圏、7月~10月は主に群馬、長野のものが出回っています。
関東:11~6月は主に愛知や関東圏、7~10月は主に群馬、岩手のものが出回っています。
品種
さまざまな品種があり、「冬くぐり」「冬のぼり」「彩音」などがあります。キャベツの場合、品種名が全面に押し出されて販売されるものはほとんどありませんが、大阪の泉州で生産されている「松波」という品種を紹介します。
松波:大阪の泉佐野市がある南大阪湾岸部のあたりは泉州と呼ばれていており、たまねぎや水なす、枝豆など様々な作物が生産されています。その中でも「松波」は栽培が難しく各産地で栽培が減少している中、泉州では、主力品種として栽培されています。甘味が強く、また、加熱することでさらに甘味を強く感じるようになり、大阪のお好み焼き屋さんでは「松波を使いたい」というところも多いようです。スーパーなどで大阪産のキャベツを見かけたら、それはもしかしたら松波かもしれません。
●春キャベツ(新キャベツ)
秋に種をまき春に収穫する品種で、新キャベツとも呼ばれます。
巻きがゆるやかで葉が柔らかいため、持った時に冬キャベツに比べて軽く感じます。春キャベツは2月下旬頃から出回り始めます。スーパーなどに多く並び始めるのは3月になってから、5月頃までは購入できます。
葉が柔らかいため、サラダなど生食に適しています。
●夏秋キャベツ(高原キャベツ)
主に長野県や群馬県などの涼しい高原で栽培され、春(3~6月)に種を蒔き、夏から秋(7~10月)に収穫されます。
夏から秋に出回るキャベツはこの種類になります。主に冬キャベツが品種改良されたもので、冬キャベツと春キャベツの中間的な特徴を持っており、生食・加熱どちらにも向いています。
群馬県の嬬恋(つまごい)村の特産品「嬬恋高原キャベツ」などが有名です。
●グリーンボール
冬キャベツに比べると少し小さい丸型で、名前の通りボールのような形をしています。
5月、6月くらいに出回ります。
生食・加熱どちらにも向いています。
●紫キャベツ(赤キャベツ、レッドキャベツ)
葉の表裏が紫色のキャベツです。葉肉や芯は白色であり、冬キャベツなどよりサイズは小さめですが、葉が厚く巻きが強いことが特徴です。
紫キャベツの紫色は、アントシアニン色素によるものです。アントシアニン色素は水溶性であるため、ゆでたり煮込んだりすると、薄くなって色移りするため、紫キャベツは生食がおすすめです。
さらに、アントシアニン色素は酸性で鮮やかな赤色に変化するため、酢など酸性のものと合わせると、鮮やかな赤色へ変化します。
ちなみに、土壌のpHによっても色が変わるようで、酸性ではより赤く、中性ではより紫色に、アルカリ性では黄緑色のキャベツになるため、同じ種類であっても地域によって違う色になることがあります。
トレビスと見た目がとても似ていますが、トレビスはレタスと同じキク科の野菜で、別物です。
●芽キャベツ
子持ち甘藍(かんらん)や姫甘藍(かんらん)などとも呼ばれています。
芽キャベツの株は地上から7~80cm程の大きなもので、この株の側面から伸びてくる茎の付け根に小さく結球したキャベツが鈴なりになります。1個の大きさは平均20g程度で、1株で50個以上の芽キャベツが実ります。
小さくても、中はしっかり葉が巻いており、まさにミニキャベツです。
芽キャベツはそのサイズ感を活かしてまるごと煮込み料理などに使用されることが多いです。
あるいはカットして炒め物やサラダにも使用されますが、アクがあるので、通常は下茹でしてから使います。
芽キャベツは高温と湿気に弱いため、収穫時期は11月中旬から3月までに限られ、日本では全国の約9割を静岡県で生産しています。
芽キャベツとケールを交配させて生み出されたプチヴェールというものがあります。軽くゆでるなどしてサラダやシチューなどに利用できます。
●ちりめんキャベツ(サボイキャベツ)
ちりめんキャベツはフランスのサボイ地方で作られてきたことからサボイキャベツとも呼ばれます。
フランスをはじめ、ヨーロッパでは比較的身近なキャベツです。
葉はちりめん状に縮れているのが特徴で葉脈がはっきりと見えます。一般的なキャベツに比べ水分が少なく繊維質で肉厚であるため、生のままでは食べにくく、加熱して食べられることがほとんどです。
日本では宮城県や北海道、千葉県などで栽培されていますが、その量は少なく、店頭で見かけることはあまりありません。
収穫時期は11月頃から3月頃です。
●カーボロネロ
結球せず葉は細長く伸びています。濃い緑色のキャベツで、黒キャベツともいわれます。
表面はサボイのように細かく縮れ、葉の縁が裏側に丸まっています。
日本でも生産はされているもののその量は少なく店頭で見かけることはほとんどありませんが、イタリアでは煮込み料理などによく利用されるようです。
葉は硬いため、生食にはあまり向いていません。もし見かけたら、細かく刻んで炒めたり、煮込み料理などに使用してみてください。
キャベツの栄養
以下は、冬キャベツ、グリーンボール、紫キャベツ、芽キャベツの栄養成分をまとめたものです。
冬キャベツの場合、1玉約1300g~1500gになります。
1玉1300gのキャベツ、廃棄率(芯)が15%とすると、1/8カットで約138gになります。
キャベツは食物繊維、カリウム、ビタミンK、葉酸、ビタミンCの補給源となる野菜です。
サラダ、和え物、浅漬け、炒め物、煮込みなど様々な料理に使いやすく、また食べる機会が多いのがキャベツの特徴です。
多く含まれる栄養素を知り、うまく料理に使いましょう。
●食物繊維
食物繊維は、腸内環境を整え便秘を予防・改善する働きがあります。
また、糖質や脂質の吸収を抑え生活習慣病の予防・改善にも役立ちます。
●カリウム
カリウムはミネラルの1種です。
体内の余分なナトリウムを排泄することで、血圧の上昇を抑える働きがあります。
カリウムは水溶性のため、水に浸けたりゆでたりすると減ってしまいます。
カリウムを摂りたいときは、蒸す、スープ、ソテーなどの調理方法がおすすめです。
●葉酸
葉酸は、赤血球の形成や妊娠期における胎児の神経の成長などに関わります。
貧血予防や妊娠期にとても大切な栄養素です。
葉酸はカリウムと同様、水溶性であるため、水に浸けたりゆでたりすると減ってしまいます。
葉酸を摂りたいときは、蒸す、スープ、ソテーなどの調理方法がおすすめです。
●ビタミンC
ビタミンCには抗酸化作用があります。
また、コラーゲンの合成を助けたり、鉄の吸収を高めたりする働きがあります。
コラーゲンは肌を構成するたんぱく質であり、健康な肌を作るためにはビタミンCが欠かせません。
ビタミンCはカリウムや葉酸と同様、水溶性であるため、調理方法に注意しましょう。
キャベツの種類のうち、芽キャベツにはビタミンCが多く含まれています。芽キャベツが旬を迎える11~3月にはぜひ取り入れてみましょう。
●ビタミンK
ビタミンKは血液凝固作用や骨の形成に関わる働きを持っています。
骨の健康に関与するカルシウムやビタミンD、マグネシウム、たんぱく質などと一緒に摂るとより効果が期待できそうです。
脂溶性ビタミンであるため、ビタミンKを取りたいときは炒めるなど油脂を使用した調理方法が適しています。
●イソチオシアネート化合物
イソチオシアネート化合物はアブラナ科の植物に特徴的な辛味の成分で、キャベツにも含まれています。
そもそもはグルコシノレートという状態で含まれていますが、虫に食べられることや調理によって細胞が傷つくなどすると、
植物の細胞にもともと存在している酵素(ミロシナーゼ)の働きによってイソチオシアネート化合物になります
イソチオシアネート化合物は昆虫などにとっては忌避成分であり、アブラナ科の植物はこれを合成することによって自分の身を守っていると考えられています。
一方、さまざまな機能性も研究されています。
・抗菌作用
・がん予防作用(解毒酵素の発現誘導、がん細胞のアポトーシス誘導などによる)
・炎症抑制作用(動脈硬化症などの予防につながる)
イソチオシアネート化合物は、揮発性です。そのため、キャベツを切って放置しておくと辛味は減り食べやすくはなりますが、
同時にイソチオシアネート化合物も減ることになります。また、加熱をするとより蒸発しやすくなります。
イソチオシアネート化合物の効果を得たいときは、食する直前に切る、生で食べるなどの工夫をすると良いでしょう。
●ビタミンU(メチルメチオニンスルホニウムクロリド)
キャベツの絞り汁から見つかった胃粘膜修復成分で、ビタミン「U」は、「ulcus(潰瘍)」の頭文字です。
キャベジンとも呼ばれており、胃の薬にも使用されています。
水溶性のビタミン様物質であるため、水に浸けたりゆでたりすると減ってしまいます。
アブラナ科の野菜には共通して含まれています。
※ビタミン様物質とは:ビタミンに似た生理作用をもつ有機化合物。微量で重要な役割を担うが、ビタミンとは違って体内で生合成できるため、栄養素として摂取する必要がない。
キャベツにはさまざまな種類がありますが、季節によって出回る種類が異なります。
その季節に手に入るキャベツの特徴を活かして、料理に取り入れていきましょう。
<参考>
・中野明雅 編著;誠文堂新光社;機能性野菜の教科書
・旬の食材百科 キャベツ https://foodslink.jp/syokuzaihyakka/syun/vegitable/kyabetu.htm
・農畜産業振興機構 野菜ブック https://www.alic.go.jp/content/001162824.pdf
・関西食文化研究会 生産者に聞く旬な話「食材研究」 食材レポート30 松波キャベツ https://www.food-culture.jp/introduction/kenkyu/report20.html
・農畜産業振興機構 ベジ探 キャベツ 東京都中央卸売市場における月別入荷実績、大阪中央卸売市場における月別入荷実績https://vegetan.alic.go.jp/vtmap_item/y2020/s01.html
・タキイ 最前線 2013 ブリーダー通信30 加工・業務用キャベツの現状とタキイキャベツの品種育成https://www.takii.co.jp/tsk/bn/pdf/2013_su_011_012.pdf
・長田早苗* 青柳康夫 日本調理科学学会 アブラナ科野菜の大量調理施設衛生管理マニュアルに沿った温度・湿度管理下における切裁および保管時のグルコシノレート量の経時変化 https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010921720.pdf
・Oregon state university 微量栄養素情報センター アブラナ科の野菜https://lpi.oregonstate.edu/jp/mic/%E9%A3%9F%E5%93%81%E3%81%A8%E9%A3%B2%E6%96%99/%E3%82%A2%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%8A%E7%A7%91%E3%81%AE%E9%87%8E%E8%8F%9C
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