基礎からわかる【高尿酸血症】気を付けたい生活習慣
一般社団法人健康栄養支援センター
医療・福祉栄養研究部
管理栄養士 笹渕未来
Contents
高尿酸血症とは
高尿酸血症とは、血液中の尿酸の濃度が高い状態のことをいいます。
尿酸とは、プリン体という物質が肝臓で分解された老廃物です。
プリン体は私たちが普段口にする食物にも含まれていますが、体内でも多く作られています。
実は、食物に含まれるプリン体から作られる尿酸は全体の1/3程度と言われており、残りの2/3の尿酸は体内のプリン骨格をもつ化合物から作られます。プリン体はあらゆる生物が生命活動をするのに大切な物質なので、体内の細胞が活動し、新陳代謝をしている限り、プリン体が生成されて尿酸は作られます。
高尿酸血症は、尿酸が作られる量が多すぎること、もしくは尿酸が上手に排泄されないこと、およびその両方が重なることが原因となります。
高尿酸血症の定義
日本痛風・核酸代謝学会の「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版(2019年改定)」では、高尿酸血症は、性別、年齢を問わず、血清尿酸値が7.0mg/dLを超えるものと定義されています。
症状
尿酸の濃度が高いだけでは、すぐには症状として現れません。尿酸値が高い状態が続くと、関節腔内に染み出て結晶化し、痛風と呼ばれる関節等の痛みを生じます。また、脱水によって尿酸の濃度が濃くなることで症状がでる場合もあります。
痛風発作が起きていなくても、関節などに結晶がたまっている状態であれば痛風と定義されています。結晶は、高尿酸血症の期間が長く、高度であるほど生じやすいと言われています。
また腎臓にたまって結石ができると背中に痛みが生じ、尿管や膀胱に移行するとその部分で炎症を起こし、激痛を生じます。尿管で起こった場合は尿管結石、膀胱で起こった場合は膀胱結石といい、これらを合わせて尿路結石と言います。高尿酸血症は、慢性腎臓病、高血圧、心不全などの発症率を増加させるリスクとなります。
男女による違い
高尿酸血症や痛風・尿路結石は、男性に圧倒的に多い病気です。女性は女性ホルモンによる影響で尿酸値がコントロールされるため、男性に比べれば少ないのですが、女性ホルモンの分泌が低下する閉経後にはやや増加します。
高尿酸血症を予防するには?
「体内のプリン体から作られる尿酸を増やさない」「食事から摂取するプリン体を増やさない」「尿酸を上手に排泄させる」ことが大切です。
肥満の解消
体重の増加や体脂肪率の上昇に伴い、血液中の尿酸の濃度が高くなる傾向があります。
また、食べ過ぎによるプリン体の摂取増加や、インスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなること)を介した尿酸の尿中への排泄低下を招きます。肥満を解消するためには適正なエネルギーを摂取することが重要で、高尿酸血症だけでなく生活習慣病である糖尿病、脂質異常症、高血圧すべてに当てはまります。
<適正エネルギー量の算出方法>
標準体重× 身体活動量
①標準体重:身長(m)×身長(m)×22(kg)
②身体活動量
・軽い労作(デスクワークが多い職業など):25~30kcal/kg
・普通の労作(立ち仕事が多い職業など) :30~35kcal/kg
・重い労作(力仕事が多い職業など) :35kcal/kg~
ここで計算したエネルギー量は目安であり、摂取エネルギーが適正であるかは体重の計測によって知ることができます。体重をしばらく測定してみて、大きな変動が無ければその時の食事量が、体重を維持するのに必要な食事量(エネルギー)となります。減量を始める際も、まずは自分の体に見合った適正な食事量を知り、そこから少しずつ減らしていく方が体への負担も少なくなります。
食事のポイント
①プリン体を多く含む食品を摂り過ぎない
プリン体が多く含まれる食品を多量に摂取すると血液中の尿酸の濃度が上昇します。
けれども、体内でもプリン体から尿酸は多く作られているため、普段の食事においてはプリン体の多い食品に気を付ける程度でかまいません。以下の表を参考にしながら、適切な食生活を心がけることが大切です。
ガイドラインでは、食品から摂取するプリン体の量は1日400mg程度にとどめることが推奨されています。
食事の際には次の2点に注意しましょう。
1)動物性食品が多くならないようにする
2)特に動物の内臓や肉汁、干物にはプリン体が多く含まれるので避ける
表を見ると、お酒を飲む時に一緒に食べる、「おつまみ」にはプリン体が多く含まれることが分かります。
ビール1缶に含まれるプリン体量はそこまで多くはないですが、飲む量が増えるとプリン体の摂取量が多くなってしまいますので注意が必要です。
②水分を十分に摂る
水分摂取量を多くして尿量を増やすことで、尿酸の排泄を助けます。飲む水の量は、1日2L以上の尿量を保つように増やすことが望ましいですが、糖分の多いジュース・牛乳・アルコール飲料を水代わりに飲まないようにしましょう。
③尿酸代謝に影響する食べ物
・果糖、キシリトールは代謝される際に体内でのプリン体分解の亢進を来し、尿酸値を上昇させます。果糖はショ糖(砂糖)の構成成分であるので、加糖飲料や果物ジュースは控え、甘い果物も摂り過ぎないようにしましょう。
・コーヒー、チェリー、ビタミンC、乳製品(特に低脂肪乳)、食物繊維は痛風リスクを低減することが報告されていますが、特定の食品やサプリメントを大量に摂取することは栄養バランスの観点からはお勧めできません。
④尿をアルカリ化する食品を摂る
尿が酸性に傾くと、尿酸の溶ける量が少なくなり、結果的に尿酸の体外排泄量が減ってしまいます。そのため、尿をアルカリ化する食品(野菜類、海藻類、きのこ類、クエン酸など)を積極的に摂るようにしましょう。
特に野菜や海藻、きのこなどはカロリーが低く、カリウムや食物繊維といった生活習慣病予防に役立つ栄養素が含まれていますのでおすすめです。副菜やサラダとして一品追加したり、おつまみのメニューを野菜中心に変えてみるのも良い方法です。
適量飲酒を心がける
アルコール飲料は、体内で作られる尿酸の量を増やすと同時に尿酸の排泄量を減らしてしまいます。併せて「おつまみ」として動物性食品(肉・魚・卵・乳など)の摂取が多くなることで、プリン体の摂取量が増えます。さらには食欲を増進して肥満へとつながりやすくなりますので、お酒の席では、飲酒量とおつまみの量、内容に気を付けてください。
銘柄によってもプリン体含有量も異なってきますが、酵母、麦芽由来のプリン体を含むビールは、蒸留酒や赤ワインよりも血液の尿酸濃度を上昇させます。
ガイドラインでは、血清尿酸値への影響を最低限に保つ1日の摂取量の目安は、日本酒1合、ビールは販売元によって350ml~500ml、ウイスキー60mlとされています。また、ワインは、148mlまでは尿酸値を上げないと記載されています。休肝日は週2日以上作るようにしましょう。
適度な運動
短時間の激しい運動は血液中の尿酸値を上昇させる恐れがありますが、有酸素運動はそうではありません。運動による減量で体脂肪を減らし、肥満を是正することで血液中の尿酸値を低下させることが期待できます。
具体的には歩行、ジョギング、サイクリング、社交ダンスなどの有酸素運動を脈が少し速くなる程度、少なくとも1回10分以上の運動を、1日合計30分以上、60分程度行うことが推奨されています。
運動に苦手意識がある方、忙しくて時間の取れない方におすすめの運動法は「日常生活の動きを利用して運動する」ことです。
・目的地の一駅前で降りて歩いてみる
・エレベーターやエスカレーターを使わず、階段で昇り降りするようにする
・なるべく車を使わないで外出する
・店の入り口から遠い駐車場に停めて歩く時間を増やす
など、実は日常生活の中には運動になる行動・時間が潜んでいます。
行動するときにあえて「辛い方」を選ぶようにすることで、日常生活の何気ない動きを運動にかえることができますよ。
ただし、運動は関節への負担によって痛風発作を誘発する危険性があるため、尿酸値が基準を超えている場合は、医師の指示に従って慎重に運動の内容を決定するようにしてください。発汗による脱水予防のため、運動前後の適切な水分補給も忘れずに行いましょう。
最後に
いかがでしたでしょうか。
普段の生活、食事において様々なポイントがあることがわかりましたね。
すべてを一気に‥‥とは考えず、手軽にできそうなことから少しずつ取り組んでいきましょう。
ご自身の生活・食事リズムやよく食べているものを思い出して、書き出してみると改善点が目に見えるのでおすすめです。
この記事を最後まで読んでくださったことが、振り返りのきっかけになると幸いです。
厚生労働省 e-ヘルスネット[情報提供] 高尿酸血症
厚生労働省 e-ヘルスネット[情報提供] 高尿酸血症の食事
厚生労働省 e-ヘルスネット[情報提供] アルコールと高尿酸血症・痛風
日本痛風・核酸代謝学会の「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版(2019年改定)」
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