乳児期から永久歯まで「噛む力を育てる」 

著者:食育・地域栄養研究部:コーディネーター
管理栄養士 田中美智子
田中美智子

離乳期から噛む力を育てましょう

離乳食の時から食べる力を育てましょう。
おっぱい以外のものを食べるのは赤ちゃんにとっては大変な勇気がいります。
あせらず赤ちゃんのペースに合わせます。

離乳食の必要性

赤ちゃんの成長は著しいので、生後5~6か月になると、乳汁だけでは、栄養(鉄、銅、たんぱく質、ビタミンC、ビタミンDなど)の必要量を満たすことが困難になります。
成長に伴い消化液の分泌が増加し、消化機能が発達するので、離乳食の消化が可能になるため、離乳食を与え、飲み込む力や噛む力をつけることが大事になります。
そして、時間を決め、場所を決めて食べさせることで、良い食事習慣をつけさせる訓練にもなります。

離乳期とは

生後、5~6か月から1才6か月頃をさします。
この時期は、食べて「噛む力」と食べる「楽しさ」を学習する大切な時です。
赤ちゃんのペースで、あせらず、行きつもどりつ、少しずつ、赤ちゃんの発達する力を信頼することが大事です。

離乳食のルール

ゴックン期(5~6か月)

この時期は反射的に吸うことから、自分の意志で口を閉じて飲み込むことを覚える時期です。
裏ごしやすりつぶしたポタージュ状から始め、水分を減らしてベタベタとしたケチャップ状にしていきます。
1回食から2回食になる時期で、乳汁(おっぱい)は欲しいだけあげます。

赤ちゃんが離乳食を食べている様子
子どものペースに合わせましょう。

1.飲み込める形に調理
2.食材は必ず加熱して殺菌
3.消化吸収のよい「おかゆ」から
4.「油なし」「味付けなし」から
5.たんぱく質源食品は量と順番を守る
6.食べさせる姿勢も大切
7.はちみつや黒砂糖、牛乳は使用しないの7つを守るようにしましょう

モグモグ期(7~8か月)

この時期は舌と口蓋(口の上側)で押しつぶして、咀しゃく、飲み込むことを覚える時期です。
ツブツブの大きさからみじん切りにしたもので、舌でつぶせる固さくらいがよいでしょう。2回食になる時期です。

カミカミ期(9~11か月)

この時期なると、上下の歯ぐきで押しつぶして、咀しゃくして、飲み込むことを覚えてきます。
あらみじん切りの大きさからコロコロ状にしたもので、歯茎でつぶせる固さになります。まだ2回食です。

パクパク期(1才~1才6か月)

赤ちゃんが楽しく食事をしている様子
食事の楽しさから「食べる力」が育まれます。

食べることだけでなく、遊びを通して、また自分以外の人との接触で様々な感覚を経験・学習する時期で、食事の自立が始まります。
食の形状は半月切りから輪切りにしたもので、固さは歯茎で噛めるようになってきます。
3回食になり、活発に動くようになりおやつも一日に1~2回必要になってきます。

幼児期の食事について

子どもが食事するときの椅子に座るときは足がつくことが大切
足はしっかりとつくようにします。
椅子に足置きががなければ台などを利用します。

この時期は、まだまだ食べる(しっかりと噛んで飲み込む)練習が必要です。
将来の食習慣と食の楽しさを育む時期でもあります。
「いただきます」「ごちそうさま」など食事の基本的なマナーも教えましょう。
そのためには、身体にあった椅子を使い、姿勢が崩れないようにします
①テーブルは肘がつくくらいの高さ
②足が床か椅子の足置きにしっかりつく
③やや前かがみに姿勢よく座れる

幼児食のポイント

「噛んで食べる力」をつけましょう。そのポイントとしては、
丸のみのクセがつかないようにしましょう。
②食習慣のもとになる味覚の基本を養いましょう。薄味にして食べ物本来のおいしさを味わうようにします。
③食べる楽しさや食べる意欲を引き出しましょう。
食の楽しさは心の栄養になります。
豊かな食体験で食べる意欲を引き出すようにします

STEP1(1歳代)

野菜を棒状に切ったもの
野菜をステックにするとつまんで
食べることができます

上下の前歯が生えそろい、食べ物がかじり取れるようになります。
第1乳臼歯(奥歯)と犬歯が生え始めます。
フライドポテト、野菜スティック、9等分したトーストなど最初は手づかみできる形状のものや、前歯でかじり取れるように縦に4つに切ったトーストなどで、固さは歯ぐきで噛めるような固ゆで卵、ハンバーグ、魚のムニエルなどが良いでしょう。

STEP2(2歳代)

奥歯が生えそろい、固さのある食材も噛み砕いて食べられるようになります。
スプーンやフォークが使えるように、スプーンにのる大きさやフォークで突き刺せる形状にし、奥歯で噛みつぶせる料理、例えばレンコンのキンピラ、チキンカツなども取り入れ、食感を楽しむために、一口大、細切り、口の大きさより大きいじゃが芋など大小様々な形に切った料理もとりいれます。


STEP3(3~5歳代)

ブロッコリーを箸でつまんでいる
箸に引っ掛かりやすい形に切りましょう。

上下20本の乳歯が生えそろい、奥歯で食材をすりつぶして食べられますが、噛む力はまだ大人の半分ほどです。
お箸の練習になる料理としては、箸にひっかかりやすい一口大のブロッコリーやほぐしやすい魚などが良いでしょう。
また、繊維質のある野菜料理、きのこや根菜、キャベツの千切りなども食べられるようになります。
食を家族で一緒に楽しむために、子どもが自分で手を加えて食べられる料理として、手巻き寿司やお好み焼きのトッピングなどを体験させるのも良いでしょう。

おやつのポイント

幼児期は朝・昼・夕で十分な栄養が摂れない時期なので、不足している栄養素をおやつで補うことが重要です。
3度の食事では足らないエネルギーと栄養素を補います。
したがって、菓子ではなく、おむすびやサンドウィッチ、焼き芋に牛乳などが良いでしょう。
そして、時間を決めて与えるようにします。
次の食事との間は2時間以上あけます。
あけられない時は飲み物(牛乳)などだけにします。
楽しみであることも必要なので、時にはドーナッツやアイスクリームなど子どもが喜ぶものもとりいれましょう。

小学生低学年(6~8歳)の食生活

大人と同じではありませんが、8歳になるころには、腎臓や肝臓の機能がほぼ整い、大人と同じようなものが食べられるようになります
自我が芽生え、自分で食べたいものを選ぶことができ、学校給食を経験することで食の体験が深まります。
また、永久歯に生え変わるときでもあり、虫歯予防や噛む力を養う大切な時期にはいります。
食生活を豊かにするために、おやつや好きな料理を家族一緒に作り、「食の力」を育てましょう。

望ましい食習慣を身につけましょう

「朝食を食べない」「おやつの買い食い」など望ましくない食習慣がつく時期で、しっかりと良い食習慣を身につけるようにしたいものです。
お稽古や塾通いなどで、個食、孤食になる前段階でもあります。
子どもの食生活を考えることで、家族全体の食習慣を見直してみてはいかがでしょうか。

かむことの大切さ

子どもがよく噛んで食事をしている様子
水やお茶で食べ物を流し込まずに
「噛む」ことを覚えましょう。

よく噛むことは虫歯予防にもつながります。
食べ物を口にいれたら、30回以上かむと、次のような効果があると言われています。
①消化を助ける → 栄養が吸収されやすくなる
②歯が丈夫になる → 唾液には虫歯を減らす成分がある
③太り過ぎを予防する → 食べ過ぎの防止になる
④味覚が発達する → 噛むことで食べ物の味がよくわかるようになる
⑤脳の働きが活発になる → 噛むときの刺激で脳が活性化され、記憶力や集中力が高まる

かむ力をつける方法

美味しそうなトンカツがのっている皿
トンカツなど噛み応えのあるメニューも取り入れましょう。

ゆっくり味わいながら、おいしさを感じながら噛むことを楽しめるように、噛みごたえのあるものを取り入れます。
例えば、肉団子やハンバーグなどミンチ肉でなく、チキンカツやトンカツなど。
野菜であれば、レタスよりセロリなどのしっかりと噛まないと飲み込めないものが良いでしょう。
料理の具材を大きめに切る方法もあります。
カレーや肉じゃがなどの煮物の野菜を大きく切る、にんじんをスティック状に切る、キャベツは千切りでなく一口大にちぎるなどがあげられます。
大事なことは、しっかりと噛み、水やお茶で食べ物を流し込まないようにすることです。

かむ力をつける食べ物

焼いたメザシ
そのまま食べられるメザシなども良いでしょう。

噛む力をつける食べ物として、食べ方の工夫もあります。
りんごは皮付きのまま、
レンコン・ゴボウはキンピラや天ぷらに、おやつには煮干しの炒ったものや堅焼きせんべいなどが考えられます。

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